全身性強皮症と全身性エリテマトーデスのオーバーラップ症候群では、ループス腎炎は軽症で頻度も低くなるが、漿膜炎は頻度が高くなり重症化することが知られている。つまり、両疾患には病態干渉があり、それぞれの疾患の病態が修飾を受けていると考えられる。本研究は、新規強皮症モデルマウス(Klf5+/-;Fli1+/-マウス)を用いてイミキモド誘発性ループスモデルを作製し、両疾患の病態干渉の分子メカニズムを明らかにすることを目的として立案された。先行研究により、Klf5+/-;Fli1+/-マウスでは皮膚硬化、間質性肺疾患、皮膚の血管障害(細動脈の狭窄、毛細血管の消失、毛細血管の拡張)、肺動脈性肺高血圧症、肺静脈閉塞性疾患、免疫異常(B細胞の異常活性化)を再現できることが示されていたが、本研究ではさらに他臓器に解析対象を広げ、心線維化(毛細血管のアポトーシスによる低酸素化が誘因)、消化管蠕動障害(平滑筋の形質がcontractile phenotypeからsynthetic phenotypeに変化するため)が生じること、および腎障害は生じないこと(間質の線維化や腎血管の変化はない)を明らかにした。Klf5+/-;Fli1+/-マウスの臓器障害の程度について広範なデータが得られたので、現在はKlf5+/-;Fli1+/-マウスにイミキモド誘発性SLEを発症させ、そのマウスにおけるSScとSLEのそれぞれの病態の変化について解析を進めている。皮膚、肺、心臓、消化管、腎臓について、病理組織学的検討を進め、また脾臓やリンパ節から単離したリンパ球のサブセット解析も進めているが、病態修飾がみられた臓器については詳細に解析を進め、両疾患の病態干渉の分子メカニズムの解析へと進めていく予定である。
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