研究課題/領域番号 |
16H06757
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷川 道洋 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70706944)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | DNA損傷修復経路 / スプライシング / 相同組換え修復 |
研究実績の概要 |
本申請者によるsiRNA libraryをベースとした網羅的スクリーニングにより同定されたDNA損傷修復因子RAD51のIRIF(irradiation induced foci)の形成能に関わる新規候補因子の中からmRNAプロセシングに関連する転写及びスプライシング因子を抽出してDNA損傷修復経路への寄与を検討した。siRNAライブラリによる網羅的スクリーニングは多くの偽陽性の因子が抽出されてしまう問題点がある。そのため同様の網羅的手法で新規のDNA損傷修復因子の抽出を試みた既報のデータと比較して重複して同定されている転写因子・スプライシング因子をした抽出された転写・スプライシング因子が寄与するDNA損傷修復経路を同定するため、DNA損傷誘導下でのコロニー形成能を評価した。放射線、UV、プラチナ製剤やトポイソメラーゼ阻害剤等の抗がん剤をDNA損傷誘導に使用した。またハイドロキシウレアによるDNA複製阻害や、過酸化水素暴露による活性酸素ストレス誘導下における評価を行った。本年度はスプライシング因子において重点的に解析を行い、スプライシング因子が相同組換え修復経路に寄与すること、またDNAの転写産物のプロセッシングを阻害することによりR-loop (DNA/RNA hybrid)を形成し、R-loopが誘因となるDNA損傷をきたすことを解明し、論文報告(Tanikawa M et al, Oncogenesis 2016 Dec 19; 5(12))を行った。本研究内容に関して日本産婦人科学会、日本癌学会において口演で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、主として東京大学医学部産科婦人科学教室の実験室にて行った。本実験室には細胞培養、real time RT-PCR、Western blot、免疫組織染色等の分子細胞生物学実験を行う施設、機器は用意されていて、申請者はその手法に習熟していた。また、東京大学医学部産科婦人科准教授の平池修及び織田克利に研究協力を依頼し、平池は分子細胞生物学実験に精通しており、織田は子宮体癌及び卵巣癌の臨床検体を用いた全エクソンシークエンス解析を行い治療標的の探索を行っており相同組換え修復経路は大きな治療標的である。また申請者の留学先であったカロリンスカ研究所のThomas Helleday博士にはDNA損傷修復を評価する実験系の材料の提供、卵巣癌治療の分子標的が見つかった際の創薬スクリーニング等を依頼可能であった。本研究には共同研究者として東京大学医学系研究科の大学院生が基礎的実験に参画しており、大学院生の貢献による部分も大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本申請者は網羅的スクリーニングで同定した転写因子・スプライシング因子がBRCA1の野生型BRCT領域と結合することを同定している。BRCA1の転写制御能GADD45やp21の細胞周期制御因子の発現調節をすることがわかっているが、これはDNA損傷に対する二次的な反応である。この機能のDNA損傷修復経路への直接的な寄与は未だ不明である。BRCT領域はPARP阻害剤に対し感受性を示す変異が集積することは既知である。申請者は既に野生型BRCTと家族性乳癌卵巣癌患者に認められる変異BRCTのGST fusion plasmidを作成している。GST pull down法にて新規DNA損傷修復候補因子の野生型BRCT領域との結合を評価する。BRCA1の制癌機構に重要な役割を担う因子はWTのBRCT領域と特異的に結合し、変異BRCT領域に結合しないことが予想される。PARP阻害剤暴露下での複合体形成の違いを調べることも視野に入れている。本研究ではDNA損傷修復経路への寄与を示すためにLaser microirradiation法を用いる予定である。候補因子のGFP fusionプラスミドを細胞にトランスフェクションした後にLaser microirradiationで細胞にDNA損傷を与え、共焦点顕微鏡でリアルタイムに観察することによりDNA損傷修復への直接的寄与を検討する。既に本申請者は新規DNA損傷修復因子がPARP1と結合することを同定しているが、現在のところその意義は未解明である。一部の転写因子やスプライシング因子がDNA障害時にpoly ADP ribosyl化することが報告されており、Laser microirradiationにより集積する新規候補因子があれば、PARP1阻害剤によりその集積動態が変化するかも検討する予定である。
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