研究実績の概要 |
熱傷や放射線治療、外科的手術での焼灼などによる喉頭瘢痕や気道狭窄など、熱性喉頭粘膜障害は臨床において非常に治療に難渋する病態である。本研究は,熱性喉頭組織障害の経時的な組織学的変化・分子生物学的なメカニズムの解明を行うことを目的に,動物モデルを作製し,コラーゲンや弾性線維、ヒアルロン酸、分泌線などの組織学的解析と炎症性サイトカインなどの分子機構の分子生物学的解析を行った.また,臨床応用可能な治療として、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与による障害抑制効果を検証することを目的とした. 組織学的解析(HE染色、アルシアンブルー染色、エラステッィクワンギーソン染色)については、ラット熱性喉頭組織障害を作成し、組織の経時的変化を正常組織と比較し、day1,3,5,7,14,28にて以下が判明した。 上皮において、day1での脱落・剥離、day3,5での再生、day7以降での不完全な再生。筋肉において、day1,3,5,7での萎縮・減少、day14以降での再生。基底層において、day1での破壊、day3,5,7,14での消失、day28での再生。分泌腺において、day1,3,5での減少、day7,14,28での再生。 分子生物学的的解析では、当モデルでの急性期での炎症性サイトカインの上昇(IL-1β、TNFなど)および慢性期における減少が確認できた。 また、免疫組織学的解析としては、急性期での好中球、マクロファージの増加および慢性期での減少が確認できた。しかし、急性期および慢性期におけるG-CSF受容体抗体の健側と患側の有意差は認められず、G-CSF投与における障害抑制効果を証明しうるものではないと考えられた。
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