我々はオートファジーに必須とされてきたAtg5やAtg7に依存しない、新規オートファジーを発見した。新規オートファジーが胎児期におけるマウス網状赤血球の分化・成熟に伴うミトコンドリアの除去が、新規オートファジーにより行われることも明らかにしている。酵母を用いた遺伝学的解析から、新規オートファジー関連候補遺伝子を複数同定し(Aag1~5)、新規オートファジー経路のメカニズムについて解析を進めている。申請者は、酵母で同定された新規オートファジー関連因子のマウスのオルソログであるAag3に着目し、解析を行った。 Atg5ノックアウト細胞及び、Atg5/Aag3ノックアウト細胞を用いて、エトポシドでオートファジー誘導を行い、Aag3がゴルジ体の凝集に関与することを明らかにした。Aag3の細胞内局在を調べたところ、通常はサイトゾルに拡散しているが、オートファジー誘導を行った際にはオートファゴソーム様のドット構造に局在していた。また、Atg5ノックアウト細胞においてオートファジー誘導すると、Aag3が経時的に発現が上昇する様子が観察された。野生型の細胞では、このような現象は観察されないことから、Aag3が新規オートファジーに関与することが示唆された。 マウスを用いてAag3の組織毎の発現を調べたところ、Aag3は筋を除く多くの組織で発現していた。Aag3のノックアウトマウスの血液を用いて血球数の測定を行ったが、野生型との差は観察されなかった。胎児及び12週齢のノックアウトマウスを用いて、LC3やp62等、従来のオートファジーに関与する因子の発現を調べたが、違いは観察されなかった。今後、Atg5/Aag3ダブルノックアウトマウスを用いて解析を進めることで、新規オートファジーの生理的意義に迫ることができると期待している。
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