医療過疎化・少子高齢化が進行する農村部を中心に全国各地で普及振興している薬用植物の栽培加工利用は、日常的に五感を刺激する他、身体活動、緑黄色野菜の摂取、互恵的地域コミュニティの醸成を促すことが示唆されており、認知症を予防する可能性がある。 今年度本研究では、地域住民に薬用植物の栽培加工利用を促進している農村地域の自治体と協働し、65歳以上の高齢国保住民全員に健康推進員を通じて自記式郵送式質問紙を配布した。質問紙では、自宅及び地域協働による薬用植物の栽培加工利用状況、日常生活における主観的物忘れの訴えのほか、年齢や性別、教育歴等の基本特性、身体活動や食習慣、地域住民との交流や帰属意識を測定した。 合計1722票の有効回答票と1039件の認知機能検査結果が得られた。質問紙及び認知機能検査双方に参加したものは481名であった。施設入居者及び認知症患者を除外して解析した結果、日常的な物忘れ及び軽度認知障害の疑い者が、高年齢層(後期高齢者vs前期高齢者)と低教育歴層(12年未満vs12年以上)において多く観察された。薬用植物の栽培加工利用状況については、自宅にて個人で行っている人が56.5%、グループで行っているものが3%であった。 年齢や性別、教育歴を調整し、自宅及び地域協働による薬用植物の栽培加工利用状況と自覚的な記憶障害の訴え及び客観的な認知機能障害との関連性を検証したが、統計的に有意な関連性は見られなかった。
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