成長期における咀嚼を介した顎関節領域への刺激低下は、形態異常、筋力低下、不安定性および過剰な負荷が原因となる変形性顎関節症(顎関節OA)の発症および進行との関与していると考えられ、近年注目されている。本研究の目的は、成長期の咀嚼刺激低下が顎関節潤滑機能に関与するルブリシンの産生能変調を生じ、顎関節OAを誘発するメカニズムを、形態学的・組織生化学的に解明することである。 5週齢のWistar系雄性ラットを対照群、偏位群、回復群の3群に分け、9週齢まで粉末飼料で飼育した。偏位群と回復群には斜面版を用いてラットの下顎を左方偏位させた。また回復群は7週齢から装置を撤去した。各評価は7週齢および9週齢の各群で行った。組織学的評価としてトルイジンブルー染色を行った。偏位2週間の7週齢において、対照群と比較して偏位群の下顎頭外側部は表層軟骨の増加の傾向が認められた。また抗ルブリシン抗体による免疫組織化学染色の結果から、下顎頭外側部軟骨層においてルブリシン陽性部位の増加傾向を示した。偏位4週間の9週齢においては、偏位群に7週齢時と同様の結果が得られたが、対照群および回復群に関しては著明な変化は認められず、軟骨層の変化やルブリシン陽性部位の増減は明らかではなかった。 現在、実験動物モデルの確立および解析手技は向上し、各結果に傾向が出ているが、各群においてサンプル数が不足しているため、統計学的評価には至っていない。今後も継続的に実験を行い、生化学的評価を加えてより精度の高い結果を明らかにしていきたいと考えている。
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