本研究「イスラエル/パレスチナにおけるアラブ性の探求―包括的な現代文化研究の基盤形成」 は現代中東地域研究において国際的に重要な地域とみなされているイスラエル・パレスチナについて、文学を核とした文化活動の研究を通してこれまで看過されてきたアラブ性という共通の背景を明らかにしようとするものである。今年度は前年度に論文としてまとめたヘブライ語小説のアラビア語の表現について、より詳細な検討(注の有無、分量など)を行った。その結果、第一世代の作家がアラブ文化やアラブ社会を背景・テーマの中心に据えて作品を執筆したのに対して、第二、第三世代の作家はアラビア語の口語こそが作品のアラブ性を表現するツールとして活用していることが判明した。さらにこうした口語アラビア語の使用は、イスラエル領内のパレスチナ人のヘブライ語作品と類似するのではという仮説も生まれた。これに関しては今後の課題としたい。 また、昨年度延期となっていた作家との会合は先方の都合により叶わなかったが、メールでのやりとりを行い翻訳や研究に関して多くの示唆を得た。 さらには、台湾での国際ワークショップで本研究の成果を報告することで、台湾文学研究者や「中国語文学」の研究者との交流を行い、今後の共同研究の足がかりとなった。この共同研究は今後具体的に進めることが決定している。
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