2017年度は本研究対象の時代設定に関わる作曲家、クラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)の生誕450年であったため、それを記念したイベントへ参加するために6月にヴェネツィアを訪問し、併せて現地調査を行なった。 また12月には早稲田大学オペラ/音楽劇研究所内企画としてプロジェクトを立ち上げ、シンポジウムを催し、自身も登壇した。シンポジウムのテーマとしたのは、彼の最後のオペラ《ポッペーアの戴冠》の題材である「古代ローマ」について。台本を作成したフランチェスコ・ブゼネッロは、ヴェネツィアのほぼすべての知識人たちが集まっていたアッカデーミア・デッリ・インコーニティ(知られざるものたちのアカデミー)のメンバーとして作家活動を行っていた。オペラの題材は、それ以前はギリシア神話であることが当たり前であったが、彼が描いたのは古代ローマの皇帝をめぐる物語であった。つまり、この作品は世俗的なオペラとしては初めて実在した人物を取り上げたものであり、オペラの題材が多様なものになるきっかけであったと言える。これについては、ヴェネツィアという自由な環境から生まれた枠にとらわれない発想が、所属するアカデミーを通して作家に影響したと従来から言われており、そこでシンポジウムではこの古代ローマという題材を通して、その後の欧州で作られるオペラの題材傾向を考察し、発表した。 研究期間内には個別のアカデミーに関する研究発表を、学会や論文を通して行なってきたが、全体をまとめた成果についても今後発表していく予定である。
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