工作機器の操作や自動車の運転、さらには航空管制など、ヒトが重要な役割を担うシステムは多岐にわたるが、作業員や操縦者のエラー行動は、深刻な事故の原因となることが知られている。この様なエラー行動を事前に予知することができれば、ヒューマンエラーに起因する様々な事故を防ぐことが可能となる。エラー行動を事前に予知する手法としては、脳内のエラー行動の源となる神経活動を検 出することが考えられる。 ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)は、脳波等の脳活動から患者・使用者の意図などを、機械学習手法を使用して読み取り、環境制御やコミュニケーション補助を行う技術である。この技術は、認知神経科学の知見に基づき脳活動を機械学習技術によって解読 することで実現されている。しかしBMIの分野でこれまでに行われた先行研究では、エラー行動直後の脳活動を検出することでBMIの性 能向上を図るものであり、エラー行動後の脳活動の検出にとどまっていた。そこで本研究では申請者が発見したエラー行動に関与する脳活動を検出する手法を活用することによって、エラー行動を事前に予知する手法を開発する。 本年度は、昨年度までに開発した視覚弁別課題を遂行中の被験者の脳波信号から、機械学習手法を用いてエラー行動を単一試行で予知する手法を改良し、実験により性能を評価した。視覚弁別課題には、申請者らの先行研究で使用した、d2-test of attentionを使用し、エラー行動を事前に予知する手法としては、申請者がエラー行動を事後検出するために使用した方法をもとに、信号処理や機械学習のための特徴量などを調整するとともに不均衡データに対する性能向上を試みた。実験の結果は、単一試行の脳波信号でエラー行動を予知することができることを示唆するとともに、昨年度までに開発したものよりも性能が向上することが判明した。
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