研究課題/領域番号 |
16H06792
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤田 慎之輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80775958)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 大規模問題 / 適応再スタート付き加速勾配法 |
研究実績の概要 |
本研究は,適応再スタート付き加速勾配法(以下,加速勾配法)を構造物の非線形解析に応用し,大規模問題に対する計算時間を短縮することで,構造物の設計の質の向上に寄与することを目的とするものである。 まず,弾性解析に対して,①剛性方程式を直接解く方法と,②ポテンシャルエネルギー最小化問題を適応再スタート付き加速勾配法で解く方法との比較検証をした。非常に大規模な問題においては,①の方法よりも②の方法の方が高速に釣合変位を求めることができることが確認された。その成果は,今年の8月末の日本建築学会大会で学生が発表予定である。 加えて,非線形解析への方法②の適用にも着手した。構造物の釣合解析における非線形性は,材料非線形性と幾何学的非線形性に大別されるが,昨年度は幾何学的非線形解析を対象として,①ニュートンラプソン法により非線形剛性方程式を直接解く方法と,②ポテンシャルエネルギー最小化問題を加速勾配法で解く方法を比較した。その結果,やはり,非常に大規模な問題に対しては,①よりも②の方が計算時間が少なくなる傾向にあることが確認された。②の方法で解く際に,加速勾配法以外に,最急降下法,共役勾配法,準ニュートン法といった他の勾配法の適用も試みたが,大規模問題に対しては加速勾配法が最も高速に解が得られた。研究成果は,昨年末に開催された日本機械学会 第12回最適化シンポジウム(OPTIS2016)で社会に発信した。 建築構造物は近年高層化・複雑化が顕著であり,それに伴って解析モデルの規模も拡大しているため,大規模問題に対して有効性が確認された本手法は,そのような背景を有する建築構造物の解析手法の1選択肢として有効なものとなり得ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
28年度は,加速勾配法のプログラムの実装と,線形弾性範囲内におけるポテンシャルエネルギー最小化問題への同手法の適用が目標であった。 結果として,プログラムは滞りなく実装でき,線形弾性範囲内におけるポテンシャルエネルギー最小化問題への加速勾配法の適用と結果の検証は昨年夏前には完了した。 そこで,29年度に着手予定であった非線形解析への適用を前倒しでおこなった。材料非線形解析への着手こそできなかったが,幾何学的非線形解析への加速勾配法の適用と検証は行うことができ,OPTIS2016への学会発表へと繋げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行うことができなかった材料非線形解析への加速勾配法の適用と有効性の検証を行うことが第一目標である。 5月中までに理論構築を行い,数値実験ができる状態にする。その後,7~8月までに,昨年度の研究成果である幾何学的非線形解析に対する加速勾配法と,この春に理論構築する材料非線形解析に対する加速勾配法を組み合わせて,複合非線形解析に対する加速勾配法についての検討も行う。 その後,研究成果の是非や質の向上を図るため,対外的な意見交換を行う。 具体的には,10月に実施される予定の第12回コロキウム構造形態の解析と創生2017および12月に実施される予定の第40回情報・システム・利用・技術シンポジウムのいずれかもしくは双方への論文投稿及び発表を行う。また,9月にドイツで行われるIASSでの積極的な意見交換も行う。 その後,査読論文の執筆に取り掛かり,1月中の投稿を目指す。投稿先としては,日本建築学会構造系論文集,Structural and Multidisciplinary Optimization,Computers & Structuresなどが候補として挙げられるが,研究の進捗状況や得られた結果が見えてきた段階で適宜選定する。
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