研究課題
室温で大きな電気磁気効果を示すマルチフェロイック材料は基礎研究のみならず、省電力デバイスなどの応用の観点からも重要である。しかし現在、室温動作可能なマルチフェロイック材料は非常に限られており、新たな材料開発が求められている。本研究では室温で強誘電性とフェリ磁性を示すGaFeO3型酸化物薄膜に注目し、室温での大きな電気磁気効果発現と室温マルチフェロイック材料創出を目指す。本年度は以下の2つの結果を得た。(1)元素置換によるGaFeO3薄膜の特性制御パルスレーザー堆積(PLD)法によりGa量の異なるGaxFe2-xO3薄膜を作製し、その磁気特性、及び強誘電特性を調べた。その結果、Ga量x = 0-0.5の範囲ではGa量増大に伴い飽和磁化が増大し、保磁力が減少することが明らかになった。一方、x = 0.5-1の範囲ではGa量増大に伴い飽和磁化が減少し、保磁力は一定の値を示すことを見出した。これらの結果はGa量、そしてGaの置換サイトが物性制御に非常に重要であることを示している。さらに強誘電性を調べたところ、Ga量増加に伴い抗電界が減少することが明らかになった。また、Ga量を制御し磁気相転移温度を室温付近にすることで、磁気誘電効果が増大する結果を得ることに成功した。(2)GaFeO3薄膜中のドメイン制御と構造解析GaFeO3は磁気特性・誘電特性に大きな異方性を持つため、薄膜の配向方向の制御は重要である。本研究ではPLD法により様々な基板上にGaFeO3薄膜を作製し、その結晶配向と磁気・誘電特性を調べた。その結果、基板を変えることで4種類もの結晶配向を得ることに成功した。また、配向により面内磁気異方性定数やリーク電流密度などが大きく変化することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は以下の2つの結果を得た。(1)元素置換によるGaFeO3薄膜の特性制御パルスレーザー堆積(PLD)法によりGa量の異なるGaxFe2-xO3薄膜を作製し、その磁気特性、及び強誘電特性を調べた。その結果、Ga量x = 0-0.5の範囲ではGa量増大に伴い飽和磁化が増大し、保磁力が減少することが明らかになった。一方、x = 0.5-1の範囲ではGa量増大に伴い飽和磁化が減少し、保磁力は一定の値を示すことを見出した。これらの結果はGa量、そしてGaの置換サイトが物性制御に非常に重要であることを示している。さらに強誘電性を調べたところ、Ga量増加に伴い抗電界が減少することが明らかになった。また、Ga量を制御し磁気相転移温度を室温付近にすることで、磁気誘電効果が増大する結果を得ることに成功した。(2)GaFeO3薄膜中のドメイン制御と構造解析GaFeO3は磁気特性・誘電特性に大きな異方性を持つため、薄膜の配向方向の制御は重要である。本研究ではPLD法により様々な基板上にGaFeO3薄膜を作製し、その結晶配向と磁気・誘電特性を調べた。その結果、基板を変えることで4種類もの結晶配向を得ることに成功した。また、配向により面内磁気異方性定数やリーク電流密度などが大きく変化することが明らかになった。
高い電気磁気効果や新奇デバイス創出を狙う上で、強誘電性の向上と磁気特性制御は非常に重要である。GFO型酸化物(MxFe2-xO3)では置換元素の種類を変えることで物性を幅広く制御することが出来る。これは元素種によって置換サイトが異なることに由来しており、Aサイト置換(Ga3+、Al3+)では結晶構造安定化や磁化増大、CDサイト置換(In3+、Sc3+)では強誘電性の向上が得られる。しかし、単一元素置換では強誘電性向上と磁気特性制御の両立は難しく、新たな材料設計指針が必要である。今後の研究では複数元素種を共添加し、元素置換サイトをより詳細に設計することで、良質な強誘電性とフェリ磁性を併せ持つ室温マルチフェロイック材料を創出する。これらの系統的な調査により、GFO型薄膜の物性拡張とこの分野で基礎となる材料の確立を進める。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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