本研究の目的は,組織において権力を持つことが個人の思考・行動に及ぼす影響について検討することである.より具体的には,社会心理学および組織行動論の領域における社会的勢力感(sense of social power)の議論を基盤として,社会的勢力感の変動が判断および意思決定の傾向にいかなる影響を及ぼすかについて実験を通じた検証を行った.実施した複数の実験からは,勢力感の上昇によって,確証バイアスや連言錯誤,内集団ひいきなどのバイアスが強化される可能性が示唆された.加えて,探索的に実施した実験からは,勢力感の心理的影響を調整する要因の存在も示唆された.
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