研究課題/領域番号 |
16H06805
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井原 智則 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (70767350)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 超音波流速分布計 / UVP法 / 気液二相流 |
研究実績の概要 |
初年度となる平成28年度では、水中音響の基礎評価および、計測システムの構築および信号処理手法の検討を中心に行った。 ハイドロフォンを用いた水中音響の基礎評価を行った結果、プロペラ近傍の音響信号としてはプロペラの回転に起因する信号成分と駆動系の振動に起因する成分が大きいことが分かった。得られた知見を基に計算シミュレーションにより、複周波数同時励起型トランスデューサの設計を行った。 基礎的な信号処理システムの構築を行った。信号処理システムは任意波形発生装置、パワーアンプと受信回路、AD変換器、信号処理ソフトウェアから構成されている。信号処理システムはPC上から制御可能な様にしており、操作性・利便性に配慮している。また、National Instruments社のプログラミング言語LabVIEWを用いたフルデジタルによる信号処理システムを構築した。このことにより、多様な信号処理手法の検討を迅速に行えるようにした。計測システムを用いて、任意波形を送信できることを確認した。 また、気泡流の計測に関する信号処理手法について多方面より検討を行った。その結果、振幅フィルタを用いた気泡データの抽出方法と複トランスデューサを用いたトラッキング手法について見いだした。前者の振幅フィルタは気泡起因の信号が背景信号に比べて強度が大きいことを利用し、統計的に気泡データを抽出する方法である。後者のトラッキング手法は気泡の時空間同一性を利用し、トラッキングを行う事で、ラグランジュ的に気泡信号を処理する手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年度計画についてはおおむね順調に進展している。 プロペラ周囲の音響雑音についても概ね系統的な評価を行い、トランスデューサ設計に役立つデータを得た。ただし、予算及び製作上の都合から、複周波数同時励起型トランスデューサの設計については数値計算を中心とした評価を進めており、平成29年度において実際の製作を行うこととした。 信号処理について当初の予定を前倒しして平成28年度において評価を行い、気泡流の特徴を利用した信号処理について見通しを得た。 また、平成29年度に行う予定の実船を用いた実験の準備を進めており、実験室での較正と並行して実船における実験を進められるようにしている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえ、複周波数同時励起型トランスデューサの製作、計測システムの高度化、計測システムの較正、実船における計測実験を行う予定である。 複周波数同時励起型トランスデューサの製作においては、初年度において得られた知見を踏まえ設計を行い、計測分解能と計測距離に関する合理的な性能を達成することを目標とし、その客観的な評価を行う。 現在の基礎的な計測システムを基にして、将来的な応用も考えた汎用性を確保しながら高精度な計測が出来る様にハードウェアおよびソフトウェアの両面から高度化を進める。 計測結果の実験室体系における較正と実船における計測実験を繰り返し、信頼性の高い妥当な結果を得られるための手法を超音波の励起方法と信号処理手法を中心に検討し、本研究の最終目標を達成させる。
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