本研究の目的は,webメールを用いた恋人間暴力の予防的介入を開発することであった。 平成28年度は,恋人間暴力の予防的介入を実施するために重視すべき要因を検討する予定であった。しかし,恋人間暴力の測定に使用する予定であった尺度が,恋人間暴力を測定する尺度としての妥当性が十分に担保されていないことから新たな尺度の選定が必要になったこと,恋人間暴力の予防的介入のための先行研究のレビューに時間を要したことなどから,調査を一部実施するのみにとどまった。 実施した調査では,20歳から30歳で未婚かつ恋人がいる人を対象とした。分析では,まず暴力の被害経験に対して,潜在ランク理論による分析を行い,調査対象者を暴力の被害経験の程度によってグループ分けした。その後,コミットメントやアタッチメント,関係内での行動などがグループによって異なるかを検討した。その結果,心理的暴力の被害が大きいグループでは,暴力加害の経験も多く,カップルで暴力的な相互作用が展開されている可能性があった。また,心理的暴力の被害が大きいグループは,恋人にコントロールされている感覚が強いこと,精神的健康が低いことが示唆された。また,恋人のネガティブな行為を許しやすい人ほど,暴力の被害経験が多いことも示唆された。以上のことから,介入においては,恋人からの自律性を高めるとともに,恋人のネガティブな行為を許さず指摘するような行動パターンを形成する手法が望まれると考えられよう。
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