本研究の目的は,webメールを用いた恋人間暴力の予防的介入を開発することであった。 平成29年度は,予防的介入を実施するために重視すべき要因の検討を中心に研究を行った。具体的には,以下の2つの研究を実施した。第1に,20歳から35歳の恋人がいる人を対象とした調査を実施し,恋人からのネガティブな行為に直面した際の行動計画が恋人からの暴力加害・被害に与える影響を検討した。その結果,恋人からネガティブな行為をされた場合にネガティブなフィードバックを与えることが暴力被害の少なさと関連することが示唆された。第2に,対象を恋愛関係から広げ,夫婦関係を対象にした縦断的研究を実施した。その結果,別れを避けようとする回避コミットメントの強さが,配偶者からの心理的暴力加害を引き起こし,結果として心理的暴力被害の高さと結びつくことが示唆された。また,回避コミットメントの強さが,配偶者への暴力加害を引き起こし,配偶者の被害の高さに結びつくことも示唆された。 また,予防的介入を実施する際に有効な手立てや,高校生・高校教諭・社会人などのニーズおよび恋人間暴力についての知識や考えを検討するため,首都圏の高校や首都圏および青森県のNPOで聞き取り調査を行うとともに,DV予防啓発のために心理学講習会を実施した。 以上の調査を踏まえ,webメールを用いた恋人間暴力の予防的介入を計画し,予備調査と位置づけて少人数の大学生に対して実験を実施するとともに,実験へのフィードバックを得た。
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