研究課題
プルキンエ細胞死と運動失調を主徴とする自然発症ミュータントマウスpcd(Purkinje cell degeneration)の原因遺伝子はNna1/CCP1であることが報告された。近年、Nna1は脱グルタミン酸酵素として注目され、その機能の欠失はtubulinのC-末端においてglutamateの蓄積を及ぼし、直接にプルキンエ細胞死を引き起こし、これがpcdマウスの運動失調のメカニズムと考えられている(Cell,2010。Nna1の機能ドメインはC-末端の酵素であることから、遺伝子改変マウスの技術を用いてC-末端のexon21-22をfloxするマウスを作製した。まず、全身KOマウス(null)の行動解析では運動失調と学習障害が見られた。組織解析では小脳全体の萎縮および分子層の縮小が確認され、プルキンエ細胞の消失も多く見られた。次に、小脳委縮の原因を調べるために、細胞死の指標であるcleaved caspase-3の免疫染色した結果、アポトーシス細胞はnullマウスのプルキンエ細胞層と顆粒細胞層にあることを明らかにした。最後に、神経細胞死のメカニズムを分析するために、polyglutamated tubulin(PolyG-tubulin)の発現量をウェスタンブロットで解析したところ、Nna1 nullマウスではWTの約1.6倍であった。小胞体(ER)ストレス活性化経路に関連する遺伝子CHOPをIn situ hybridizationで調べた結果、3週齢のKOマウスのプルキンエ細胞層にCHOPの陽性シグナルが多数見られた。 ERストレス経路の活性化はNna1の機能損失の一つの結果と考えられる。以上の研究過程から、Nna1の機能ドメインを欠失させると、pcdマウスと類似した病理的な所見が確認された論文を2018年のJ neurochemistry1に公刊された。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018
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Journal of neurochemistry
巻: 147 ページ: 557-572