本研究は,幼児期の子どもを対象に,「他者の感情はわからない」ことがわかる発達的変化を検討した。その際,(1)状況からの推測,(2)表情からの推測,(3)日常会話,に着目した。(1)について,5歳ごろより,ある状況では他者の感情は「わからない」という回答を行うこと,(2)について,表情を理解する際は「わからない」という回答が少なくなること,(3)について,子どもがやりとりを行う相手が時期と年齢によって違うので,誰との会話に着目するのかが重要であること,がそれぞれ明らかとなった。これらの知見は,「他者の感情がわからない」認識は推論の手がかりにより異なる発達プロセスを経ることを示唆している。
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