研究課題
視床は脳深部に位置する神経核群で、感覚情報の主要な中継核である。我々はマウスの視床を用いて、神経核構造の形成メカニズムの解明を目標としている。これまでにフォークヘッド型転写因子であるFoxp2が視床形成期に視床のなかで発現濃度勾配を示すことを見いだしている。そこでFoxp2機能が低下しているFoxp2(R552H)ノックインマウスを用いて、視床パターン形成におけるFoxp2の必要性の検討を行った。視床前方、内側および後方遺伝子マーカーを用いて、視床内部のパターニングの変化を検討した結果、視床の後方に存在する神経核が縮小していたことからFoxp2は後方の視床分化に重要であることが示唆された。さらに、十分性を検討するために子宮内電気穿孔法を用いて予定視床領域にFoxp2を強制発現し上述の遺伝子マーカーの発現変化を検討したところ、Foxp2は視床の後側化に十分であることを見いだした。また、Foxp2は視床のみならず他の脳領域でも発現していることから、Foxp2(R552H)ノックインマウスの表現型がFoxp2の視床自律的な機能を反映していない可能性があった。そこで子宮内電気穿孔法でFoxp2に対するshRNAを視床に導入し、視床特異的にFoxp2機能喪失実験を行ったところ、Foxp2(R552H)ノックインマウスの表現型と同様な表現型を得ることができた。この結果は、Foxp2は視床自律的に重要であることを示唆している。
1: 当初の計画以上に進展している
順調に研究は進行している。
これまではFoxp2(R552H)ノックインマウスを分子マーカーを用いて検討してきたが、神経回路の投射パターンにも表現型があれば、Foxp2は分子マーカーだけではなく機能的にも後外側視床亜核群の運命決定に重要であると言える。そこで今後は、後外側視床亜核群は体性感覚野に投射し、内側視床亜核群は前頭葉へ投射することを利用して、Foxp2(R552H)ノックインマウスの体性感覚野もしくは前頭葉に神経トレーサーを注入し視床神経細胞を逆行性にラベルすることで、神経回路への影響を可視化し検討する。
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