研究課題/領域番号 |
16H06826
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堤 敦朗 金沢大学, 国際機構, 准教授 (20536726)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 災害精神保健学 / 精神障害者の権利 |
研究実績の概要 |
内閣府によると、東日本大震災における障害者死亡率は、障害をもたない人より、高い地域では約3倍である。精神障害者の情報アクセシビリティの問題も報告された。東日本大震災や昨今の熊本地震における避難所における自閉症や発達障害をもつ人やその家族の受け入れ拒否などの問題も浮き彫りとなり、医療や社会的支援へのアクセシビリティの問題が浮き彫りとなった。このように、人権の観点からも、精神疾患をもち、医療や社会的支援を必要とする人々に、エビデンスに基づいたサービスを持続的に提供できるシステムを構築することが重要である。そして、精神障害者に対して、物理的・心理的そして情報アクセシビリティを高め、包摂的でアクセシブルな社会を作ることが求められている。しかし、災害時における精神障害者のアクセシビリティを含む国際的なガイドラインは存在しない。よって、国連システムの本部や国事務所と連携し、災害時の精神障害者のアクセシビリティに関する最新の国際の議論・方向性等を収集・分析し、内外のグッド・プラクティスを集め、国際社会が求めている指針案を開発することを目的とする。
災害時における精神障害者のアクセシビリティに関し、学術論文を網羅的に調べ、レビューする。同時に、国連システム機関等、国際社会における様々な決議や指針等なども包括的に調べ、関連するものを収集し、方向性や中身を検討・分析する。また、関連が強い領域(国連ニューヨーク本部経済社会局の担当官や、被災地の行政官・アカデミア・実務者・NGO、精神障害者当事者)からヒアリングを行なった。2年目は、これを継続すると共に、被災経験のある精神障害者のインタビュー調査を行い、科学的に分析し、現状と課題を明らかにする。これらに基づき、国際社会として今後進むべき方向性を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学術論文の検索を行い精神障害者のアクセシビリティに関する論文や図書を収集しレビューを行った。また、現在進行中の議論などについても網羅的に調べるために、国連ニューヨーク本部経済社会局やその他の国連システム機関に協力を仰ぎ、災害時における精神障害者のアクセシビリティに関連する分野の担当官等から、最新の情報等を聞き取った。また、国連で使用する用語や表現をめぐるプロセスについても聞き取りを行った。 国内においては、日本における知見とグッドプラクティスを集約して成果物である国際指針案に生かすために、研究協力者のネットワークを生かして、東日本大震災や熊本地震で対応に当たった行政職員や現地で活動した現地の専門家から聞き取りを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
国内外の学術論文によるエビデンス、書籍等による専門的見地、国連決議による国際的な意思決定の状況、研究者の最新の知見、国連関係者における最新の政策議論、国内専門家による被災地での知見、被災地の行政担当者もよる経験と課題および精神障害者の現場の生の声を収集し、課題とギャップを考察し、国際指針案を検討する。国連システム、アカデミア、現場、当事者のステークホルダーにシェアし、それぞれからのインプットも集約することで、幅広くバランスのとれた国際ツールとして、国連等が使用できるものを目指す。また、ロンドン大学やメルボルン大学の専門家にレビューを依頼することでクオリティと汎用性の最大化を目指す。また、完成した国際指針案を国連、研究者、そして国内外のステークホルダーに発表する。
|