特に災害時の精神保健への適切な対応は今後の持続可能な社会実現のために欠かせず、災害後の精神保健や心理社会的支援への社会的ニーズが増えてきた。それに伴い、トラウマ疫学研究や治療研究、そして災害支援における精神保健・心理社会的支援などは格段に進歩してきた。実際に、国際社会では、多くの有用なガイドラインが発表されてきた。一方で、災害時における精神障害者の医療や社会的支援へのアクセシビリティの問題がある。このように、人権の観点からも、精神疾患をもち、医療や社会的支援を必要とする人々に、エビデンスに基づいたサービスを持続的に提供できるシステムを構築することが重要である。よって、本研究では、災害時の精神障害者のアクセシビリティに関する最新の国際の議論・方向性等を収集・分析し、更には内外のグッド・プラクティスを集め、国際社会が求めている情報を学術的に提供することを目的とした。
具体的には、学術論文によるエビデンス、書籍等による専門的見地、国連決議による国際的な意思決定の状況に加えをまとめた。また、国際的に災害が多発するフィジーの保健省の関係者、地域社会で活動している専門家への聞き取りを行った。また、神戸市役所と共同で1995年の阪神淡路大震災時の障害者のアクセシビリティに関する過去の記録を調べ、関係者へのインタビューを行い、分析をした。更には、障害者の死亡率などについても検討を行った。これらについては、現在出版の準備を行っている。
|