研究実績の概要 |
脂肪組織由来間葉系幹細胞ADSCは血管新生効果を有し、細胞治療の臨床研究も行われている。しかし多様な幹細胞サブセットの中で、ドナーが血管新生能を有する幹細胞をどれだけ有するのか、その細胞品質評価と実際の治療効果に関するvalidationについては、全く知見が得られていない。本研究では、計23例の心臓血管病患者の皮下脂肪組織より単細胞分画 (SVF)を精製し、フローサイトメトリーにてADSCの細胞表面マーカー解析(CD31, CD34, Thy-1, KDR, LNGFRなど)を行った。また接着培養により各患者由来の培養ADSCを樹立し、コロニー増殖能・VEGF分泌能を測定した。さらに培養ADSCをヌードマウス下肢虚血モデルに異種移植し、移植後14日目にin vivo血管新生能 (レーザードップラー血流比・レクチン還流組織標本)を検討した。 患者臨床情報とADSCサブセットプロファイリングの検討では、インスリン抵抗性指標のHOMA-IRと、SVF中のLNGFR陽性分画率が有意な負の相関を認めた (r=-0.56, p<0.005)。さらにLNGFR陽性率は、培養ADSCの増殖能、VEGF遺伝子発現・分泌能に加え、in vivo血管新生能 (r=0.70, p<0.05)と有意に相関した。LNGFR 遺伝子欠損マウス由来の培養ADSCを用いた検討では、WT由来培養ADSCと比較して有意に増殖能とin vivo血管新生能が低下した。我々は、心血管病患者の皮下脂肪組織由来のADSCの機能評価を通じて、インスリン抵抗性・脂肪組織慢性炎症に伴い特定の幹細胞サブセットが減少することを見出した。 上記の結果を中心に多数の国内外での学会発表を行い、現在幾つかの解析を追加した上で論文投稿準備中である。
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