自閉スペクトラム症の発症にミクログリア細胞のライソゾームの機能不全が関与するのか否かを明らかにするめに、モデル動物の作製を試みた。本年度はウイルスRNAを模倣する合成二本鎖RNA化合物 ( polyinosinic-polycytidylic acid: polyIC)を母体腹腔内に注射し、出生した仔ラットが神経発達障がいモデルになりうるかを検討した。出生した仔ラットにopen field testを行ったところ、不安様行動変化が認められた。また、USV (ultrasonic vocalization) test でも、発声パターンの変化が認められている。 併せてpolyICを母体に注射後生まれた新生児ラットおよび正常新生児ラットを4%パラホルムアミド溶液で灌流してから脳を取り出し、新鮮凍結切片を作製し、間接蛍光抗体法による組織染色を行った。その結果、マクロファージ系免疫担当細胞のマーカーとされる糖タンパクGpnmb (glycoprotein non-metastatic melanoma b)陽性の細胞がpolyIC投与モデルで多く認められた。これ以外の一次抗体として、抗LAMP-1抗体、抗cathepsin B抗体、およびミクログリアマーカーとしてのIba1抗体と抗CD11b抗体を使用したが、polyICモデルラットと正常ラットとの間に有意な違いは認められていない。 さらに、polyICあるいは生理食塩水を妊娠ラットに注射後の胎児脳からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析により比較した。polyIC注射後の脳で増加、減少している分子種が認められており、その再現性の確認を行っている。
|