研究課題/領域番号 |
16H06831
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
菊池 大介 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 研究員 (60782208)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | NV中心 / 磁気共鳴 / スピントロニクス / スピン波 / スピン蓄積 |
研究実績の概要 |
室温で動作する“単一スピン検出器”としての性能を有するダイヤモンド中の窒素―空孔複合体(NV)中心を用いた、スピン蓄積、スピン流の新規検出方法の確立を目指し研究を遂行している。平成28年度は、1 磁性体中に励起された磁気共鳴および表面スピン波をNV中心の磁気共鳴を介して検出、2 NV中心のスピン寿命を検出する実験系の構築を試みた。 1 フェリ磁性絶縁体イットリウム鉄ガーネット(YIG)中をミリメーター以上伝搬する“表面スピン波”によってダイヤモンド中のNV中心の磁気共鳴を励起可能ではないかという着想から、NV中心の磁気共鳴を用いたスピン波センサの実現へ向け実験を行った。 NV中心の磁気共鳴は、緑色レーザーの照射によって生じる蛍光を測定することで検出可能であり、NV中心を含むダイヤモンド、YIGから成る試料の一端にマイクロ波を用いて表面スピン波を励起し、YIG中を伝搬する表面スピン波によって生じたNV中心の磁気共鳴を光学的に検出する。結果、YIGの表面スピン波とNV中心の磁気共鳴の周波数が一致する条件下で表面スピン波によるNV中心の磁気共鳴が観測され、NV中心が表面スピン波センサとして動作することを示した。また、YIG上の各位置でNV中心の磁気共鳴を測定し、本スピン波検出手法は、ミリメーター以上伝搬した表面スピン波を検出可能な感度を持つことを実証した。 2 より高感度にスピンを検出するため、レーザー、マイクロ波パルスを用いてスピン寿命を検出する実験系の構築を行い、本実験系でNV中心のスピン寿命が測定可能であることを確認した。NV中心のスピン寿命外部のスピン状態によって変化すると考えられ、次年度は本実験系を用いたスピン蓄積の検出を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YIG表面を伝搬する表面スピン波をダイヤモンドNV中心により検出することに成功し、スピン蓄積の検出へ向けたスピン寿命を検出する実験系の構築を完遂した。また、本結果について国内学会で発表を行った。以上の観点から本研究計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1 YIG中の表面スピン波の伝搬をNV中心のスピン寿命によって検出することを試みる。本実験によって、表面スピン波の励起周波数に依存しないスピン検出が可能となり、2 のスピン蓄積の検出につながる。 2 まず、Pt/YIG試料を作製し、Ptに電流を印加した際にスピンホール効果によって生じるスピン蓄積をNV中心のスピン寿命から検出することを試みる。また、その他手法(熱勾配やスピン偏極電流の注入等)によって生じたスピン蓄積の検出も検討中であり、多種手法を駆使してNV中心を用いたスピン蓄積の検出を実現させる。
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