本研究は、助産所の熟練助産師の安全な胎児娩出法を詳細に分析することを目的とした。 方法について、首都圏と近畿圏の開業助産所管理者25名に調査依頼し、助産所熟練助産師8名から同意を得、平成29年7月~8月に行った。調査内容は、分娩第2期の安全な胎児娩出法に対する基本的な考え方を半構造的面接、手技の実際をファントム使用での動画撮影、ICレコーダーで録音した。分析方法は、研究協力者である複数の熟練助産師のスーパーバイズを得ながら分娩第2期の各過程を分析した。尚、本研究は福井大学医学部倫理審査委員会の承認を受けて実施した。 結果は、平均年齢:64.1歳、助産師平均就業年数:38.3年、平均分娩介助件数:2375件であった。児頭娩出時の手技は、第3回旋の抑制も促進も行わず、陣痛によってゆっくりと娩出されてくる児頭を支えるのみであった。肩甲娩出時は陣痛を待つことで、恥骨と前在肩甲との間に隙間ができ、肩甲が娩出してくることを確認したのち、前在を後方に引き下げるのではなく、骨盤誘導線に向かって前方に肩甲娩出を行っていた。躯幹の把持方法は、児の両腕を外側から両手で包み込むように把持していた。全員に共通していたことは、ゆっくりとやさしく娩出することが重要であり、努責はかけず自然な陣痛によって娩出することが、児にとって最もストレスが少ない介助方法であるとの考え方であった。 助産所熟練助産師の安全な娩出手技への共通ポイントは、胎内姿勢を保持し、生まれてくる力をそのまま引き出すことであり、介助者の力を加える方が、児にストレスを与えると考えていた。助産師基礎教育テキストでの仰臥位分娩介助法は、初学者である学生を対象とし、分娩台での介助法であることを考慮しても、児の胎内姿勢を保持した手技を十分説明していないと考える。
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