本研究の目的は,相談場面において相談者の来談意欲を高める援助者の効果的なコミュニケーションを解明することである。そのために,相談場面における援助者のコミュニケーションを録画し,映像解析と対人プロセス想起法をもとに来談意欲との関連を検討した。その方法として,相談場面を録画した映像の解析によってコーディングされた援助者のコミュニケーションと相談後に相談者が評定した来談意欲との関連を統計的検定により検証した。次に,録画した映像を相談者に観てもらい,相談中の体験プロセスを対人プロセス想起法によりインタビューし,M-GTAを用いて質的に考査した。その結果,相談者の来談意欲に関連する援助者のコミュニケーションが明らかになり,そのコミュニケーションを相談者がどのように体験しているかが明らかになった。これらの成果は,日本カウンセリング学会第50回記念大会および日本心理学会第81回大会において発表された。 また,解明された効果的なコミュニケーションについて援助者養成への応用可能性を検討するため実践を行った。その方法として,研究参加者は大学生とし,解明された効果的なコミュニケーションについてレクチャーを行った。そして,実践前後に試行カウンセリングを行い,映像解析によってコーディングされた研究参加者のコミュニケーションを統計的検定により比較した。その結果,相談者の来談意欲を高めるために効果的な援助者コミュニケーションは,レクチャーすることによって相談内容に改善がみられることが明らかになった。
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