研究課題
本研究の目的は「心疾患患者の運動機能の改善が再入院率低下に関与するか」を明らかにすることである。そのため、平成28年度の研究では、「心疾患患者の再入院に関係の強い運動機能評価は何か」を明らかにするために、文献の網羅的探索を行いメタアナリシスによって影響の強い運動機能評価を明らかにすることを目的として実施した。方法は、EMBASE、MEDLINE via Ovid SP、PubMed、the Cochrane Library via Wiley Online Libraryの電子データーベースを使用し、”握力”、”筋力”、”歩行速度”、”運動機能”に関するコホート研究の論文を第三者機関(国立研究開発法人国立成育医療研究センター政策科学研究部)のサポートを受けて収集した。解析対象は、18歳以上の心疾患患者とし、身体機能に影響をおよぼす脳血管疾患および整形外科疾患を合併する論文は除外した。その結果、心疾患患者の身体機能と再入院や生命予後との関係について報告されていた論文は、下半身の筋力、握力、歩行速度、立ち座りの能力およびバランス機能などの指標が使用されていたが、最も多く報告されていた指標は6分間歩行試験であった(33論文中26論文)。この6分間歩行試験と生命予後との関係について、7309名を対象としたメタアナリシスによる解析を実施した結果、心疾患患者とくに心不全患者の6分間歩行試験と生命予後には有意な関係が認められ、6分間で歩ける距離が短ければ短いほど生命予後も短くなることが明らかとなった。なお、その他の指標は論文数がほとんど1論文のみであったため、メタアナリシスによる解析を実施することは出来なかった。したがって、現状の研究では6分間歩行試験を指標とすることが最もエビデンスが高いことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は「心疾患患者の運動機能の改善が再入院率低下に関与するか」を明らかにすることである。そのため、平成28年度は、今後評価を進める運動機能について、研究1「心疾患患者の再入院に関係の強い運動機能評価は何か」を明らかにするために、文献の網羅的探索を行いメタアナリシスによって影響の強い運動機能評価を明らかにする。そして、研究2では研究1で得られた結果をもとにトレーニング介入の前後で運動機能評価を実施し、「心疾患患者における運動機能の改善は再入院の低下に関与するか」という仮説を証明することを目的としている。平成28年度の段階で研究1は終了し、国際学会で発表を行った。現在は研究2の遂行に向けてデータ収集を行っている。したがって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
現在、研究1の結果をもとに、当院の心臓リハビリテーションが処方された18歳以上の虚血性心疾患患者とし身体機能評価を実施中である。測定開始時に運動機能評価を実施し、3ヵ月後に再度運動機能評価を実施する。その際に、①運動機能が改善した群(改善群)、②運動機能が変わらない群(不変群)、③運動機能が低下した群(低下群)、の3群に分類し、その後1年間の心血管イベント発生を評価する。なお、イベントは①全死亡率、②心血管由来の死亡率、③再入院率、に分類して解析を実施する予定である。
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