金利やGDPなどの経済時系列データを統計学的な手法で分析する場合には、分析目的に応じてベクトル自己回帰モデルやGARCHモデルといったパラメトリックな統計モデルを選択することが一般的である。しかしながら、パラメトリックモデルには欠点が知られている。それは、パラメトリックモデルの選択に経済データが「直線関係にある」あるいは「対数線形関係を持っている」などの関数型の情報をデータの分析前に用いていることに起因する。分析者がモデルを選択するといことは、分析者の裁量を許し、分析者の恣意的な結論を導く可能性を排除することは出来ないことを意味する。この問題に対処するため、統計モデルの関数型をデータより決定するノンパラメトリックなモデルを用いることが近年では常識となっている。 本研究では、非定常確率過程のクラスである単位根過程や長期記憶過程におけるノン・セミパラメトリック統計理論の研究と応用を目指した研究を行った。 非定常確率過程が非線型変換された確率過程を共変量とするノンパラメトリックな回帰モデルに対してNadaraya-Watson推定量などのカーネル推定量を適用する際に用いることのできるカーネル関数の一様収束と漸近理論の研究を行った。この結果は今後、海外の学術会議(IMS-APRM2018)にて発表予定である。 ボラティリティという確率的な変動が非線型な非定常過程で記述されるセミパラメトリック非定常GARCHモデルの研究を行った。最尤推定法を用いたパラメータ推定問題に関する研究を行い、概ね一致性の証明を行う事ができた。今後は、漸近理論とシミュレーションの分析を行う予定である。
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