研究課題/領域番号 |
16H06840
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
近広 雄希 信州大学, 工学部, 助教(特定雇用) (10778905)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 緊急橋 / シザーズ橋 / 動的挙動 / 耐震性能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,72時間以内での迅速架橋を目的としたシザーズ型緊急橋「モバイルブリッジ」を対象に,その動力学特性を解明し,さらには,被災現場における余震などを想定した激しい揺れに対する耐震性を分析することにある。本研究の遂行によって,被災現場における橋の安全性をより現実的な観点から評価でき,シザーズ型緊急橋の実用化を大きく促すことが期待される。 平成28年度は,提案するシザーズ型緊急橋に対して,(1) FEM解析モデルの構築,(2) 基礎的な動的特性の検討, (3) 振動実験に基づくモデル化の妥当性評価を具体的に行った。項目(1)・(2)では,これまでの研究開発で試作した歩行者用・車両用のシザーズ型緊急橋を対象にモデル化を行い,静解析・動解析(固有値解析)から,基本的な構造特性について評価した。ここでは,シザーズ型緊急橋が架橋中・架橋後の境界条件を想定して解析を行った。なお,これらの解析には汎用解析プログラムMarcを用いた。さらに項目(3)では,実験橋を用いた振動実験を行い,橋の固有振動数,振動モード,減衰定数などの基礎特性を評価した。この計測では,シザーズ構造体の構造的な弱点となる部材交差部(ピボット部)を主なターゲットとして行い,データ収集を行った。 上記の成果より,今後は収集したデータの分析を行うことにより,構築したモデル化の妥当性を検証する。さらに,異なる実験橋の振動実験を実施することにより,モデル化の信頼性を確保したい。その後,構築したモデルをもとに地震応答解析を行い,現場での安全性に関連付けて本橋の耐震性能について評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の研究計画にあるように,(1) FEM解析モデルの構築,(2) 基礎的な動的特性の検討, (3) 振動実験に基づくモデル化の妥当性評価を行った。項目(1)・(2)よりモデル構築の後,固有値解析により種々の境界条件下でのシザーズ型緊急橋の動的挙動について評価することができた。現在は,項目(3)の振動実験に基づいて,モデル化の妥当性の評価を引き続き行っている。この妥当性の評価については,計画当初からも時間を費やすことが予測されていたため,予め再実験などの時間を見積もって計画している。そのため,計画全体としての遅れは特にない。また一方で,地震応答解析に対する予備的な解析も同時に進めており,モデル化の妥当性を示した後に,速やかに解析を行う準備を整えてある。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成29年度は,初年度の研究成果を踏まえ,(1) 振動実験による動的特性の解明,(2)実験結果を反映した解析モデルの構築,(3)幾種かの地震波・解析モデルを想定した地震応答解析を計画している。まず項目(1)では,初年度で実施した解析モデルの妥当性について,振動実験に基づく動的な面からも引き続き評価を行い,項目(2)のモデル化の整合性を改めて評価する。この振動実験については,既往の研究で試作した実験橋を用いる。実験結果を反映したモデル化を行った後には,項目(3)にあるように,被災現場を想定した地震応答解析を行う。ここでは,幾種かの解析モデルを構築し,その地震時挙動を検証し,たわみや応力などの物的特性を評価する。項目(3)で得られた結果をその解析条件によって系統的分類をし,被災現場でのシザーズ型緊急橋の耐震安全性に関する基礎資料として整理する。
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