今年度は昨年度の検討をもとに実ネットワークでの適用を試みた.しかしながら,実用可能な範囲の時間で計算が完了できないことが明らかになった.これにより,実ネットワークの適用にはより効率的な解法が求められることがわかった.しかしながら,この実現には現在のモデル構築方針から大きく変更することが求められ,研究期間での実現が不可能であると判断した.そのため,今年度は将来的な道路の統廃合はじめ,各種インフラの縮小のための基礎的な知見を得ることを目指し,これまでの土地利用規制が人口や建物の配置にどのように影響したか分析することとした. 岐阜県内の8都市計画地域を対象として汎用の政府統計データに基づいて分析した.現在の土地利用規制において最も規制の度合いが強い農振青地と呼ばれる範囲でも人口増加,世帯の増加がみられた.くわえて,これらの範囲では他の範囲よりも人口減少の度合いが弱いことも確認できた.これらにより,土地利用規制が十分に開発をコントロールできていないことが明らかになった.岐阜市内の旧来からの市街地においてまばらに建物用地が減少し,旧来の市街地から出た市街化区域に多くの人口が流入していることが明らかになった.したがって,旧来の市街地に人口集積していた時代と比べて,人口密度が小さい土地利用が大きく広がった事実が確認できた.くわえて,近年では市街化区域内の人口流入量がこれまでと比べて大きく減少しており,DIDにも満たない範囲が市街化区域内に多く存在することから,人口フレーム方式による市街化区域の設定が過大であったことが示唆された.以上の事実により,少なくともこれまでの土地利用規制の継続では居住地の縮小,および道路の縮約等を図ることが困難であることが示唆される.
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