本研究申請者は、脊髄損傷の新たな治療技術を開発することを目的に、間葉系幹細胞が分泌するエクソソームに着目し、研究を進めている。エクソソームの回収法は超遠心法や沈殿法などの方法が用いられているが、これらの方法では治療に必要なエクソソーム量を回収することが困難であり、大量に回収する技術の構築が必要である。また、エクソソームにも様々なタイプが存在することが明らかとなりつつあり、これらの中で治療効果のあるエクソソームの分離が重要である。 申請者はヒト骨髄間葉系幹細胞を無血清培地を用いて細胞が生存することを確認し、培養上清中のエクソソームをカラムクロマトグラフィー法を用いて回収および濃縮することに成功した。また、エクソソームを定量するためのサンドイッチELISAを開発し、定量を行った。さらに溶出条件の違いによって2種類のエクソソームに分類することが可能であった。現在、これらのエクソソームの特性をウエスタンブロット法およびリアルタイム定量PCRを用いて、分析を行っている。また、これらのエクソソームの効果について、動物モデルを用いて検討を行っている。 次にイヌ骨髄間葉系幹細胞を用いて無血清培地を用いてエクソソームの回収を試みたが、多くの細胞が死滅したため、ヒトとは異なる培養条件が必要であることが明らかとなった。犬由来の1%血清を添加することによって、細胞死を抑制することが可能であった。また、培養上清中のエクソソームの存在をウエスタンブロット法を用いて明らかにした。現在、イヌの培養上清中のエクソソームをカラムクロマトグラフィー法を用いて回収および濃縮することが可能か検討を行っている。
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