我々は悪性グリオーマに対する単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSVtk)/ガンシクロビル(GCV)システムによる自殺遺伝子療法の遺伝子産物の輸送体として、腫瘍指向性を有する幹細胞を用いた自殺遺伝子幹細胞療法の検証を行ってきた。Multilineage-differentiating stress-enduring cell(Muse細胞)は生体内に存在する多能性幹細胞であり、遺伝子導入を要せず、腫瘍化しない安全性の高い幹細胞であり、これまでにHSVtk遺伝子導入Muse細胞(Muse-tk細胞)を用いた自殺遺伝子治療効果を検証し、in vitro、in vivoの強力な抗腫瘍効果と腫瘍指向性について明らかにした(現在投稿中)。今回、PETを用いたMuse-tk細胞の生体モニタリング法の確立と、GCV投与による長期的な残存Muse-tk細胞の有無の確認、正常脳に対する治療後の影響について検証し、臨床応用に際し必ず問われる治療の安全性についてのデータを集積することを目的とし研究を開始した。これまでPETを用いたMuse-tk細胞の生体モニタリングの開発を目指し、まず分子プローブの作成を行った。単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSVtk)にて特異的にリン酸化される核酸類似化合物の中で9-(4-[18F]fluoro-3-hydroxymethylbutyl)guanine(18F-FHBG)は他の化合物と比較してマウス脳で多く検討がなされており、ポジトロン核種標識化合物として18F-FHBGの作成を行った。引き続きPETイメージング、GCV治療後のMuse-tk細胞数の経時的変化、既存腫瘍内でのMuse-tk細胞の検出、PETによる治療経過の観察実験を進めている。
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