研究課題/領域番号 |
16H06852
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 朋子 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (50783601)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 世論 / 日本政治 / 政権の安定性 |
研究実績の概要 |
2016年度は内閣支持率及び政党支持率のデータについて、日本・イギリス・カナダのデータ収集を終えることができた。カナダのデータについては、当初現地に資料収集することを予定していたが、カナダの大学図書館のライブラリアンの協力のもと、データを送っていただくことに成功したため、出張せずに資料収集することができた。収集したデータから得られた基礎的な結果をもとに、研究で助言いただいているNYUのMichael Laver教授と今後の比較の研究の方向性についても議論し、焦点を当てる方向性が決まった。 続いて、日本のデータをもとに、首相が政権の現状維持ではなく内閣改造・内閣総辞職・早期解散を選択する際、世論がどのように影響を与えているかの構造を実証的に示すことに成功した。この研究内容については、アメリカのMidwest Political Science Associationの年次総会(annual conference)においてプロポーザルがアクセプトされ、2017年4月にシカゴで学会報告する運びとなっており、学会報告ペーパーとして第一段階の内容はまとめられた。 また、同報告ペーパーを書く中で、コントロール変数として導入したインフレーションの値が予想外の影響を与えることも発見した。インフレーション・デフレーションという国民が経済評価をする上での一つの重要な指標がどのように国民に評価されていったのか、この問題についても東京大学のKenneth McElwain教授と加藤淳子教授と共同研究を立ち上げることにも成功し、研究から一定の成果を見いだしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、日本の世論に着目した研究についてはその成果がまとまりつつあり、その内容を単独研究については2017年4月にミッドウェスト政治学会(MPSA)で発表することに成功し、東京大学との共同研究については海外学会(2017年9月にアメリカ政治学会(APSA)、2017年6月にヨーロッパ政治学会(EPSA))にて発表する機会を得ることにも成功した。新たな年度で同内容を論文としてまとめ上げていく目処も立った。 他国の内閣・政党支持率データ収集は、カナダとイギリスについて終えることができた。データ収集した結果、内閣総辞職の事例は他国では少ないため、内閣改造と早期解散に焦点を当てて研究を進めることをNYUのMichael Laver教授と確認している。残りのオーストラリアのデータ収集も今年度前半に仕上げる予定である。 本研究が当初の計画以上に進展したとする理由の一つは、当初想定していた研究成果だけでなく、研究を行う中でさらなる疑問・課題も見つけることに成功しており、その研究を共同研究をする相手も見つかったことにある。新たな年度ではさらにNYUのAmy Catalinac助教授も日本の世論と政権の安定性について協力して研究することを決め現在データの収集に当たっており、さらなる研究の発展に貢献できる目処が立ったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、日本について収集したデータをもとに、MPSAで学会報告を行い、論文をどのように修正し投稿に向けて準備していくか、助言を得る。 第二に、まだデータを収集できていないオーストラリアのデータの収集を夏までに行う。 第三に、収集したデータをもとに世論と政権の関係性について、内閣改造に注目してLaver教授の助言のもと比較研究を行う。この研究について、一定の成果を作り、学会報告・論文投稿に向けて進む予定である。 第四に、日本に注目する形で収集したデータとさらに追加的なデータを合わせることで、世論の政権への支持の与え方がどのように規定されているのか、上記に挙げた研究者と共同研究をさらに進める。同研究について、EPSA、APSAで海外学会発表を行うと同時に、研究を論文としてまとめ上げ、さらなる成果を見出すべく前進する。
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