H30年度は主に、国内の洋上風力発電事業が遅延、停滞する理由について補足的に文献調査を行い、その要因を整理した。そして、本研究のまとめとして「ステークホルダー間の対立点」、「ステークホルダーの種類」、「合意形成を担う第三者の有無」、「合意内容」、「合意に至るまでの期間、手続き」について事例ごとに整理し、洋上風力発電事業とその他の漁業調整がすでに行われた事例間を比較した。 国内の洋上風力発電事業の阻害要因については、主に新聞データベースを利用し研究データを収集した。その結果、日本において洋上風力発電事業が反対、遅延、停滞する理由として、主に、系統連系などの制度的理由、海底地質や防衛などの地理的理由、ステークホルダーからの反対などの社会的理由などが抽出された。補足調査により、これまで特定されていなかったステークホルダーを確認でき新たな知見が得られた一方で、本研究課題である合意形成以外の要因の重要性も明らかとなった。そのため、今後の海洋再生可能エネルギー開発における政策的要素を検討した。本内容については現在論文にまとめている段階であり、今後国際ジャーナルに投稿する予定である。 H30年度後半は、本研究のまとめとして上述の5点について事例ごとに整理した。特に、合意形成を担う第三者に関しては、従来の研究では問題解決を図るために中立的な第三者の有効性が指摘されているが、本研究で調査した事例では合意形成を担う第三者的な役割はほとんど確認されなかった。愛知県・三重県の漁業に関する協定書における合意形成では仲介者として水産庁が協議に介入したが、水産庁が漁業調整の決定権を有するなど強い権力を有しており、中立的な第三者とは言いがたく、他の事例には共通しない特殊な点であった。以上の他、洋上風力発電をはじめとする海洋再生可能エネルギー事業全般への本研究成果の転用可能性について検討した。
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