アポトーシスは昆虫の抗ウイルス応答の1つであり、ウイルスの宿主域決定機構に密接に関わる。これまでに、マイマイガ細胞が種々の核多角体病ウイルス (nucleopolyhedrovirus; NPV) 感染に対してアポトーシスを誘導すること、マイマイガ細胞で増殖感染するマイマイガNPV (Lymantria dispar NPV) がアポトーシス抑制因子Apsup (apoptosis suppressor) を持つこと、Apsupがマイマイガのinitiator caspase Ld-Droncと相互作用し、その活性型へのプロセシング誘導を抑制してマイマイガ細胞のアポトーシス誘導を抑制することを明らかにした。 今回は、ApsupとLd-Droncとの相互作用に関わる機能ドメインを探索する目的で、ApsupのN末端側領域に存在する機能未知のDUF2661ドメインの機能解析を行った。初めに、AcMNPVのApsup相同体 (LdMNPV Apsupと比較してC末端側の78アミノ酸残基を欠損した構造のタンパク質: アポトーシス抑制活性を持たないが、DUF2661ドメインを持つ) がLd-Droncと相互作用することが明らかになった。そこで、DUF2661ドメインのみを保持するApsupもしくはDUF2661ドメインのみを欠損するApsupとLd-Droncとの相互作用解析を行ったが、実験条件の検討が不十分であり、DUF2661ドメインがLd-Droncとの相互作用に必要であるかどうかについての結論は得られなかった。加えて、Apsupはオリゴマー形成することが示された。これらの結果から、ApsupのDUF2661ドメインを含む領域がLd-Droncとの相互作用に関わること、Apsupのオリゴマー形成がアポトーシス抑制機構に関わることが示唆された。
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