研究課題/領域番号 |
16H06867
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡辺 崇広 名古屋大学, 医学部付属病院, 研究員 (10624398)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | EBV関連リンパ増殖症 / ヒト化マウスモデル / 腫瘍ウイルス |
研究実績の概要 |
Epstein-Barr ウイルス(EBV)はがん治療や移植医療における強い免疫抑制に伴って移植後リンパ増殖症を発症させことがある。しかしEBV 感染症に有効な抗ウイルス薬が存在しない。EBV はヒトにしか感染せず適当な動物実験系が存在しなかったことも、抗ウイルス薬開発が遅れた原因の一つである。本研究ではヒト化マウスを応用した病態モデル動物を樹立し、EBV 遺伝子をノックアウトした変異型EBV を感染させ、より生体に近いレベルでのEBV 増殖過程およびリンパ増殖性疾患の発症病理を解析することを目指す。 1.ヒト化マウスモデルの樹立:ヒト臍帯血由来造血幹細胞を理化学研究所バイオリソースセンターより入手し、6週齢のNOGマウスに経静脈投与した。末梢血中にB細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージといったヒト免疫系細胞が分化していることを確認できた。超遠心で濃縮したB95-8株由来の感染性ウイルスをヒト化マウスに投与したが、感染は成立するもののリンパ増殖症の病態の再現には至らなかった。そこで臍帯血由来単核球を同センターより入手し、in vitroでEBウイルスと共培養し、腹腔内投与する方法に変更した。このモデル系ではEBV関連リンパ増殖症の病態が効率よく再現された。 2. 適正な感染条件の決定:ウイルス産生が可能な培養細胞の系で得られたウイルス液を超遠心機にて濃縮したものを用いた。濃縮ウイルスの一部を用いてEBV 陰性B細胞株に感染させ、GFP 陽性率をFACS で測定することで、感染性ウイルス粒子の数を計測した。10の7乗個の臍帯血由来単核球に対して10の4乗個の野生型感染性ウイルス粒子を感染させると、リンパ増殖症を効率よく発症した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト免疫系を構築したヒト化マウスの樹立は成功したが、感染実験では計画通りに病態の再現に至らなかった。しかし実験手法を変更することで、おおむね順調に病態の再現を実現することができた。さらに感染性ウイルスの獲得については、用いる細胞株や溶解感染の誘導条件を見直し、濃縮のステップなどを改善することで、感染性ウイルス粒子の獲得の効率化を図ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本検討により得られたマウスモデルの実験系を応用した、今後は変異型EBVを用いてEBウイルス遺伝子のin vivoレベルでの病原性への関与を検討していく。
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