研究課題/領域番号 |
16H06870
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
今井 健史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20778295)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 胎児 / 脳障害 / 分子状水素 / 神経細胞 / オリゴデンドロサイト / 自閉症スペクトラム |
研究実績の概要 |
胎児期の感染・炎症曝露は早産および児後遺症の主因であり、児の脳性麻痺や高次脳機能障害の発症を増加させる。これら障害の予防に関する新規管理法の開発は社会的な要請度が極めて高い課題である。本研究では分子状水素の有する抗炎症・抗酸化作用に着目し、分子状水素投与の炎症性脳障害低減効果の有無 およびGlia細胞活性化に対する直接的効果とその作用機序の解明を目的とし、得られた知見をもとに胎児脳障害予防への臨床応用を目指すものである。 平成28年度は動物実験を主に行い、分子状水素投与による児の炎症性脳障害の軽減効果の有無につき検討した。分子状水素の投与期間・方法は既報告論文(Imai K et al. Free Radic Biol Med. 2016)にて確立した方法を用いた。Control群、炎症モデル群;LPS群、LPS投与の24時間前から飽和水素水の自由飲水により分子状水素(Hydrogen water; HW)を経母体的に投与する治療群;HW+LPS群の3群において、各群からの出生仔を用いて各種行動実験を行い、障害の有無や種類とその程度を評価した。行動実験としては、Y-maze試験、Three-chamber試験、Prepulase inhibition testを行った。結果、LPS群において認めた自閉症スペクトラム様の行動異常が分子状水素投与により改善を認めた。次に各群から回収した児脳組織を用いて免疫染色を実施し神経細胞やオリゴデンドロサイトについて形態的に検討し障害の責任病変を検討した。結果、LPS群において大脳皮質および扁桃体における神経細胞数およびオリゴデンドロサイト数の減少を認め、分子状水素投与にてこれら障害の改善を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、主に動物モデルを用いた行動実験および児脳組織を用いた免疫染色を行い、モデル動物に生じる障害の種類やその責任病変およびそれら障害に対する分子状水素の改善効果の有無を検討する計画であった。これらについてはおおむね計画どおりに研究を遂行することができた。結果を受けて脳組織のマイクロアレイやDNAメチル化などで網羅的な解析を実施、病態に関与する新規因子の同定を試みる予定をしていたが、これらについても近々に実施予定にある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き脳内グリア細胞や神経細胞に対する分子状水素の作用を検討していく。これにつき平成29年度は各種の初代培養細胞を作成、それらを用いて機能解析:細胞内転写因子やシグナル伝達系に対する分子状水素の影響を評価検討していく。
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