研究課題
同種造血幹細胞移植は、難治性血液疾患に対する根治的治療法であるが、臨床的重要な課題として移植片対宿主病(Graft-vs-Host Disease, GVHD)がある。急性GVHDは、ドナー免疫系による同種免疫反応が病態の主体であるのに対し、慢性GVHDは、臓器・組織線維化が主体となり、患者の生活の質を低下させる要因となるが、その発症機序について未だ不明な点が多い。本研究では、組織線維化に関与する筋線維芽細胞の前駆細胞となる線維細胞に着目し、慢性GVHD患者における臓器線維化メカニズムを、ヒト慢性GVHDに類似したマウスモデルおよびヒト臨床検体を用いて解明し、その制御法の開発を目指している。GVHDマウスモデルを用いた検討では、GVHD標的臓器を摘出・固定するとともに末梢血を採取し、フローサイトメトリー法により、リンパ球などの免疫細胞、線維細胞の前駆細胞とされる単球、および線維細胞の測定を行っている。この結果、移植後2週経過した比較的早期から、マウス末梢血中に活性化単球の出現を認め、移植後4~6週経過した時点から、T細胞、B細胞、NK細胞といったドナー由来免疫担当細胞の出現を認めている。GVHD標的臓器は、各種染色により構造変化およびコラーゲンの蓄積を解析している。ヒト臨床検体を用いた検討では、三重大学倫理審査委員会の承認を得た上で、三重県内の移植施設における移植患者末梢血中の単球および線維細胞について継時的に検討を行っている。この結果、同様に移植後比較的早期の段階から、末梢血中に活性化単球の出現を認めており、これら細胞は長期に渡って末梢血中から検出されることが確認された。こうした細胞が長期に渡り免疫細胞と関連することで、慢性GVHD病態に関与することが考えられた。今後、さらなる詳細な検討を行い、移植後慢性GVHDの病態解明に繋げていく予定としている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biol Blood Marrow Transplant.
巻: 23 ページ: 1780-1787
doi: 10.1016/j.bbmt.2017.06.007.