今年度は、主に村落と都市の法について収集を行った。昨年度から引き続き、16世紀から17世紀前半にかけての史料を網羅的に収集することを目指した。具体的には、これまで刊行されている史料集や自治体史などから関係史料をピックアップしながら、各地の博物館・資料館・図書館等に赴いて史料の写真などを収集し、翻刻と分析を行なった。できる限り原史料や写真を閲覧することを目指したが、時間的制限からも影写本や写真帳での確認に留まった部分もあった。 都市統治法については、主に織豊期の京都・大坂・伏見に関係する文書を収集し、分析を加えた。その結果、京都については、これまで指摘されてきた所司代の玄以だけでなく、多様な主体が行政に携わっていることが検出できた。ただし、課題としては、後の町触などに繋がる行政文書の系譜を解明する必要が浮かび上がった。今後は17世紀前半の所司代や町奉行の関係文書を収集していきたい。また、町と村との関係性についても今後の課題に挙げておきたい。 村落統治法については、主に天正~寛永期の畿内・近国に関係する文書を収集し、分析を加えた。その結果、検地や貢租・訴訟関連文書では、地域における多様性が存在しつつも、一定の形式が存在することが判明した。ただし、様々な形態や意図の文書が断片的に残存しているケースが多く、体系的な分析を加えるにはなお慎重な作業と新たなアプローチが必要であることを痛感した。こちらも今後の課題として留意しておきたい。
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