研究課題/領域番号 |
16H06883
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 悠介 京都大学, 地域連携教育研究推進ユニット, 特定助教 (60780939)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 高等教育 / 教育 / アラブ / 外国大学分校 |
研究実績の概要 |
本研究は全体として、中東アラブ地域において国境を越える教育的な連携がどの程度形成され、どのような役割や機能を備えているのかを明らかにすることを目的としている。その中で本年度は、主としてエジプトやヨルダン、サウジアラビア、パレスチナなどのアラブ地域の国々の高等教育部門に焦点を当て、これらの国々においてどのような高等教育の制度的枠組みが形成されているのかを、各国の高等教育法を分析することを通して検討した。また、アラブ首長国連邦の外国大学分校に焦点を当て、レバノンやモロッコといったアラブ地域から進出している分校が、ほかの国々から進出してきた外国大学分校とはどのような異なる特質をもっているのかを明らかにした。 これらの研究成果の公表は、『アジアの「体制移行国」における高等教育制度の変容に関する比較研究』の中で、「[資料]高等教育委員会と大学に関する法令及び規則(サウジアラビア大学法)」、「[資料]ヨルダン大学法(ヨルダン・ハシミテ王国大学法」、「[資料]高等教育に関する1998年法令(パレスチナ大学法)」などを刊行することを通して行われた。また、論文「「アラブ首長国連邦における国民と外国大学分校―教育ハブの中の「アラブ基盤型」発展論理―」は日本比較教育学会の機関紙である『比較教育学研究』に研究論文として掲載された。 以上の研究では、中東アラブ地域における高等教育の展開状況を広く明らかにするとともに、アラブ首長国連邦における、他のアラブ諸国から進出した外国大学分校の特質として、欧米諸国等からの外国大学分校とは異なり、アラブ地域共通の言語的・文化的・社会的基盤によって展開していることを明らかにした点から、アラブ地域の緩やかな教育的連携の紐帯を指摘した点に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は全体として、中東アラブ地域において教育的な連携がどの程度形成されているのか、それらの連携がどのような役割や機能を備えているのかを明らかにすることを目的としている。その目的の中で、今年度は主として教育部門及び高等教育部門の各国状況に焦点を当て、それらの国々において、特に高等教育部門がどのように制度的に展開しているのかを明らかにし、研究全体の目標を達成するための基盤を形成することができたと考えられる。一方で、アラブ地域の教育部門に焦点を当てた先行研究は非常に少なく、基礎的情報を収集・分析することに時間を費やしたため、アラブ地域全体の教育的連携という、国境をを越えた枠組みには踏み込むことができなかった点については、今後の課題として挙げることができる。こうした点については、平成28年度には具体的な分析・検討まで進むことはできなかったものの、資料の収集は進み、今後の調査に必要な人脈は形成することができている。以上の状況から、現在までの進捗状況について「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、平成28年度までは主として教育部門・高等教育部門の各国状況を明らかにすることに焦点を当てて研究を進めてきたが、平成29年度については前年度までに明らかになった制度的状況を基盤として、アラブ地域において国境を越えてどのような教育的連携が行われているのかを明らかにすることに焦点を当てる。平成28年度までに形成することができた、エジプトやヨルダン、アラブ首長国連邦、カタールなどの国々における人脈をたどり、主として文献調査とインタビュー調査によって、国境を越えてどのように教育的な連携が形成されているのか、その役割や機能を明らかにする。同時に、高等教育のみではなく、初等・中等教育に焦点を当て、教員へのインタビューや学校観察などを通して、国民に限定するのではなく、「アラブ人」という枠組みにおいて、それらの学校でどのような教育が提供されているのか、またアラブ地域における人の国境を越えた移動についても実体的に明らかにする。
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