前年度において、好気的に脂質を代謝する菌として、Celluromonas sp. とRhodotorula sp.を見いだしており、これらの菌による脂質代謝産物の同定をGC-MS、LC-MS、NMRを用いて行った。その結果、Celluromonas sp.による生成物は、共役αリノレン酸であることを明らかにした。共役αリノレン酸を生産する微生物としては、乳酸菌などの嫌気性微生物が知られているが、本菌は好気条件下で共役αリノレン酸を生産することから、本菌は新規な酵素を有している可能性が示唆された。また、Rhodotorula sp.による生成物は、ヒドロキシ-α-リノレン酸およびジヒドロキシ-α-リノレン酸であることを明らかにした。 また、乳酸菌由来の酵素を用いて生産できる10-ヒドロキシ脂肪酸や10-オキソ脂肪酸を基質として用い、大豆由来リポキシゲナーゼやBacillus megaterium由来P450 BM3により変換を試みた。その結果、リポキシゲナーゼは作用しなかったが、P450 BM-3は二重結合を有する10-ヒドロキシ脂肪酸や10-オキソ脂肪酸に対して作用し、効率よく二重結合をエポキシ化することを見いだした。生成物の構造は、GC-MSおよびLC-MSを用いて同定した。また、反応生成物は新規な化合物であることを明らかにした。
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