研究課題/領域番号 |
16H06895
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 聡一 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (50730321)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 含浸 / 水分通導 / 閉鎖壁孔 / 水撃 / キャビテーション |
研究実績の概要 |
木材への液体含浸は、木材の「燃える」「狂う」「腐る」という性質の改善や新たな機能性付与を目的として行われるが、通導阻害部(閉鎖壁孔やチロース)に起因する液体浸透性の低下が問題となっている。そこで水撃作用の応用による通導阻害部の貫通を考えた。具体的には、木材外部の液体をある液圧から別の液圧まで急速に加圧した場合、浸透液体の先端部(通導阻害部)では水撃作用による圧力振動が生じ、液圧の急上昇による衝撃力とその後の急低下による気泡の発生・消滅(キャビテーション)の作用で、通導阻害部の破壊が期待される。本研究の目的は、木材への液体含浸において、木材への液体浸透に及ぼす水撃の影響を確かめることである。そのために次の課題に取り組み、以下の成果を得た。 1.水撃発生装置の試作と水撃現象の確認 水撃を簡易的に発生させるために、2つの圧力管AとBを1つのボールバルブで連結し、中を液体(水)で満たした装置を試作した。バルブを閉じた状態で、管Aの液圧を高め、バルブを開放したときの管Bの液圧を測定した。バルブを緩やかに開放した場合には管B内の液圧はゆっくり一定値に近づき、従来の含浸でみられる液圧変化挙動を示した。一方、バルブを急速に開放した場合には液圧は振動挙動を示し、水撃が発生することが確かめられた。 2.水撃が木材への液体浸透に及ぼす影響の検討 同装置の管Bにヒノキの試験片(15mm(T)×15mm(R)×300mm(L))を設置してから、管内を液体(水)で満たし、同様の操作で、バルブの緩開放及び急開放を行った後の木材への液体の注入量を調べた。緩開放と急開放で注入量には有意な差はみられなかったが、急開放のときにも管B内の液圧は振動挙動を示し、水撃の発生が確認された。以上から、この実験条件では、水撃は液体注入量にはほとんど影響しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の成果が得られたため。 1.水撃を発生させる装置を試作することができ、水撃が注入量に及ぼす影響に関する実験も行うことができた。 2.木材への液体注入量には水撃の影響はほとんど見られなかったが、本装置で発生する水撃が通導阻害部の貫通につながるほどは強くない可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
水撃が注入量に影響しなかったのは、通導阻害部を破壊するのに十分な強さの水撃が発生しなかったためである可能性があった。そこで、以下の方策を立てた。 1.水撃の強さの程度の評価 流体力学に基づく式を用いて実験装置中で起こる水撃現象をモデル化し、加圧の緩急の程度を表す係数と液圧の変化挙動(特に最大液圧と最大液圧上昇速度)の関係を計算し、実験結果と比較することで、水撃の強さの程度を評価する予定である。 2.水撃の強さを高めた装置の試作 本実験装置での加圧の緩急の程度を表す係数には、バルブの内口径と管Aの内径・長さが影響すると予測される。特にバルブの内口径と管Aの内径が大きいほど、また管Aが短いほど、加圧の程度は急になると予測される。そこで、そのような装置を新たに試作し、水撃の強さを評価し、最初に試作した装置の水撃の強さと比較したうえで、木材への液体注入量に及ぼす影響を評価する予定である。
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