研究課題/領域番号 |
16H06896
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中山 直英 京都大学, 総合博物館, 研究員 (40781894)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 分類学 / 水産学 / 形態学 / 分子系統学 / 魚類学 / 底魚 / 深海魚 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
本年度は,スミソニアン研究所(米国),国立台湾大学,国立海洋生物博物館(台湾),国立科学博物館,高知大学,および京都大学に保管されている博物館標本と組織サンプルの調査を行った.また,国内での標本採集(高知県と愛知県)に加え,現地研究者の協力を得て,台湾北東部および南西部,さらにベトナム南部で市場調査を行った.博物館標本の調査では,本亜属の種多様性が高い西部太平洋に重点を置き,この海域に生息する既知種のタイプ標本を重点的に観察した.一方,市場調査では,主に遺伝的分析に用いる組織サンプルを採取するとともに,生鮮時の色彩や発光現象を記録した.形態形質を検討したところ,伝統的に認められてきたヤリヒゲ亜属は,鱗の棘の形態や配列,発光器の構造,色彩,および頭部の被鱗域で大きく2つグループに分けられることが明らかになった.これらの2グループは,本研究で行ったミトコンドリアDNAの系統解析からも支持されたため,それぞれ独立した亜属に相当すると考えられる(このうち一方は新亜属となる).一方,種分類では,南シナ海およびオーストラリア東岸沖から未記載の可能性が高い2種を新たに確認した.本研究に関わる内容について,すでに4回の口頭発表を行っており(うち2つは国際シンポジウム,1つは招待講演),成果の公表に向けて投稿論文も複数執筆している.さらに,研究の課程で発見したトウジン属別亜属の1新種について記載論文を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度に予定していた米国研究機関の訪問を前倒しして行ったため,今後のスケジュール調整が必要であるものの,標本の観察自体は着実に進んでいる.一方,本研究では,本属魚類の種多様性が高い東南アジア周辺を重点的に検討しなければならないが,国際シンポジウムへの積極的な参加を通し,現地研究者とのネットワークを構築することができた.また,海外の研究協力者を新たに得たことにより,遺伝的分析用の組織サンプルを当初の予想以上に充実させることができた.成果の公表も逐次行っており,研究はおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリアなどの海外研究機関を訪問し,所蔵標本の調査を継続する.滞在先は標本の観察状況や現地研究者との調整によって変更する場合がある.また,遺伝的分析では,解析に用いるサンプルおよび遺伝子領域を充実させる.現在執筆中のものも含め,得られた成果を順次論文として発表する.
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