原発性肝癌は主に肝細胞癌と胆管細胞癌に大分されるが、肝細胞癌と胆管細胞癌両者の性質を併せ持つ混合型肝癌は予後が不良である。正常肝組織の肝細胞と胆管細胞は肝前駆細胞から発生することから、混合型肝癌は肝前駆細胞が癌化したものであるとの仮説を立てた。 この仮説を実証するために、肝前駆細胞が過度に自己増殖を行う遺伝子改変マウスを作成した。成体マウスの肝臓は、大量肝切除後には成熟肝細胞および肝前駆細胞の両者が増殖して失われた肝組織を再生するが、この遺伝子改変マウスはアルブミン分泌成熟肝細胞においてユビキチンリガーゼ複合体蛋白のDdb1が特異的にノックアウトされており、p53が活性化され細胞周期が停止する。 研究代表者前職のノースカロライナ大学チャペルヒル校、XiongラボとMTAを締結し、実験用マウスを入手した。京都大学動物実験施設でSPF化した後、肝特異的Ddb1ノックアウトマウスとその比較対照マウスの系統を樹立した。現在これらの2系統のマウスの繁殖、長期飼育実験、表現型解析実験、肝切除の予備実験を行っている。 予備実験として野生型マウスを用いて、安全に術後生存が得られる最大肝切除容量を決定すべく、30-70%肝部分切除を行っている。50%肝切除まではほぼ安全に行うことができた。 ノックアウトマウスの長期生存、肝腫瘍形成の観察実験を開始した。文献的には生後2年以内に約70%のマウスが肝腫瘍により死亡するとされている。当実験には長い観察期間が必要なため、同腹でオスのノックアウトおよび対照マウスは優先してこの実験に割り振っている。
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