研究課題
飢餓状態における生殖の制御機構の解明を目的とし、甲虫のコクヌストモドキをモデルとし研究を遂行した。この機構は、自然界での限られた餌の中で、エネルギーを個体の生存に当てるのか、次世代の繁殖の為に当てるのか、バランスをとり集団や種を維持するための普遍的な機構であると考えている。親個体に栄養が不十分な場合、卵巣内の濾胞において、成長段階特異的な成長の停止とそれに引き続いた細胞死が誘導される事を確認した。成長の停止の後に細胞死が起こる事から、この成長段階は、濾胞が栄養によって成長を継続させるか細胞死を起こすかの分岐となるチェックポイントとして機能すると考えられる。チェックポイントで見られる細胞死と酷似した細胞死は、インスリン経路のRNAiによっても観察された。一方、この細胞死の阻害がDcp1(カスパーゼ)やAtg1(オートファジー関連遺伝子)のRNAiによって可能であった。また、卵黄タンパク質であるビテロジェニン遺伝子の脂肪体での発現も変動が見られた。以上の結果から栄養状態に置ける生殖の制御機構は、インスリン経路を介し、卵巣の自律的な制御だけでなく脂肪体による卵黄タンパク質の供給もまた関与する事を明らかにした。甲虫の卵巣は端栄養型と呼ばれており、卵と遠く離れた保育細胞が栄養管によってつながれている。卵に必要な物質は栄養管を通して保育細胞から送られると言われている。本研究によって初めてミトコンドリアが栄養管を通って卵に放出される様子が観察された。また、絶食時に誘導される細胞死を起こした濾胞につながっている栄養管が閉じていることも観察された。現在のところ、栄養管が閉じた事で濾胞の細胞死が引き起こされたのか、あるいは細胞死が起きた結果、栄養管が閉じたのかは不明であり、今後の課題である。これらの結果は2017年に国際学会にて発表し、現在学術誌に論文として投稿準備中である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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