研究課題/領域番号 |
16H06915
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久世 尚美 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教(常勤) (20778071)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 情報ネットワーク / 管理型自己組織化 / 生物システム / 意思決定 |
研究実績の概要 |
申請者は、認知機能を有する自己組織化ネットワークアーキテクチャの確立に取り組んでいる。大規模、複雑なネットワーク、とりわけあらゆる「モノ」が通信機器としてのポテンシャルを持ち、それらが流動的に変化し続けるIoTを対象としたとき、システム管理者が互いに性能や状態の異なる全ての機器を管理し続けることは実質不可能であり、また各機器が取得可能な情報は、不確実(不完全、あいまい、かつ動的)なものとなる。このような環境下では、不確実な情報に基づいて機器自身が思考し、学習し、判断し、行動の選択を行うことが必要となる。 28年度において、申請者は、自然界における、互いに能力や状態の異なる個体同士が協調し、行動を行う群れの仕組みの、IoTなどにおける多様な機器同士の協調との親和性の高さに着目し、自己組織化制御への応用を行った。生物の群れにおける集団的な行動選択の数理モデルであるEffective Leadership Modelにおいては、多くの情報や経験を有し、環境に応じた独自の判断に基づいて行動する“leader”の役割を有する個体と、近隣の個体に追従する“follower”として行動する個体とが存在し、個体間の局所的な協調を通して間接的にleaderがfollowerを牽引することにより、群れ全体としての環境に適応的な行動選択を達成している。申請者は、自己組織的な経路制御手法であるポテンシャルルーティングを題材として、Effective Leadership Modelに基づく環境に適応的なデータフォワーディング方式を提案した。そして、ネットワークシミュレーションを通して、その特性、および有用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、大規模、複雑なネットワークにむけた認知機能を有する自己組織化ネットワークアーキテクチャの確立に取り組み、順調に成果をあげている。具体的には、自然界において、鳥などの生物の群れが、不確実な情報に基づきながらも、局所的な協調を通して、群れ全体として環境に適応的に行動を行う仕組みに着目してネットワーク制御へと応用した手法を提案し、数値シミュレーション、およびネットワークシミュレーションを通して、その特性、有用性を示している。これらの研究成果は、論文誌へと投稿予定であるとともに、国内の研究会においても口頭発表されており、研究成果の発信についても取り組んでいる。 今後、これまでの知見を踏まえ、ヒトの脳が環境に対して適応的な行動選択を行うための基本的な原理であるベイジアンネットワークに基づく予測機構に着目し、自己組織化制御へと適用する課題に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、ヒトの脳が環境に対して適応的な行動選択を行うための基本的な原理であるベイジアンネットワークに基づく予測機能に着目し、自己組織化制御へと適用する。ベイジアンネットワークは、相互に関連のある事柄の因果関係を表現するグラフであり、「原因」から「結果」が生じる確立をデータとして保有する。ベイジアンネットワークを利用することにより、複雑な因果関係の表現が可能となると同時に、知覚可能な「結果」から直接知覚されない「原因」の候補とその確率を得ることができる。ベイジアンネットワークは、知覚情報の履歴により構築され、また新たな情報の近くにより随時更新される。 このような仕組みを自己組織化制御へと応用することにより、観測知覚情報が不確定である状況下においても、観測範囲外を含むシステムの真の状態への推測と、それらに基づいた将来起こりうる変動の予測を行い、周囲の環境やその変動に対して適応的に制御を行うことが可能となることを明らかにする。また、大規模かつ多様なネットワークを対象としたシミュレーションにより提案手法の有効性を示し、実用化に向けた議論を行う。その成果を国内外で発表し、論文誌投稿を行う。
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