本研究の目的は、縉紳全書と呼ばれる清代中国の官僚名簿に関して、その内容から官僚人事の規定と実態の差異を描出し、さらに海外でどのように利用されていたのかを明らかにするものである。 この研究を通じて、省レベルの大官が下級地方官僚の人事を行う際、自身の権限がより広がるよう柔軟に人事の請願を行っていたことを、数量データで示すことができた。また海外での利用について、日本には徳川吉宗の文教政策によって移入された可能性が高く、明治時代においては陸軍省・海軍省が組織的に入手し、諜報活動に利用していたことが判明した。さらにアメリカについては、大使などが清朝の諸情報を得るために入手していたことが判明した。
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