本研究は、「保守」「右派」などのように政治イデオロギーとしては「右」に分類される政治運動を「保守運動」と呼称したうえで、保守運動の女性参加者たちに着目しながら必ずしも「自由・平等・人権」といった概念に訴えかけない女性運動の在り方を考察することを目的とした。1990年代以降、日本社会では「新しい歴史教科書をつくる会」のような草の根レベルの保守運動が台頭してきた。保守運動の参加者といえば一般的には男性が想定されるが、今日では女性活動家も少なくはなく、女性中心で構成される運動グループも登場している。日本の第二波フェミニズム以降の女性運動は、「女性」という運動主体を確立し、自由・平等・人権・平和といったテーマを扱ってきた。本研究では、女性による保守運動をひとつの独立した運動として捉えることで、従来の女性運動とは異なる女性たちの運動が形成されていることを提示しようと試みた。 実施した研究は具体的に、1)「行動する保守」に連なる女性グループの街頭演説・デモ行進・抗議行動の動画分析、2)女性中心に活動する保守系グループがなぜ形成されるようになったのかを日本の保守運動の歩みの観点から考察、3)女性による保守運動を女性運動という観点から考察する理論研究、の3点である。 これらの研究内容は現在、投稿論文として公表するために執筆中である。また、申請者がこれまでの研究において取り組んできたことも踏まえて、日本の保守運動・極右運動における社会調査の実施方法に関する英語論文を執筆した(採録決定済み・刊行日未定)。
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