研究課題/領域番号 |
16H06934
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長江 春樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40779005)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | C-H結合活性化 / 前周期遷移金属 / アミノアルキル化反応 / アミド錯体 / アルキル錯体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、炭素―水素結合を直接官能基化する「炭素水素結合活性化反応」について後周期遷移金属錯体とは異なる反応性を示す、前周期遷移金属錯体によるσ結合メタセシス反応を活かした新規触媒反応の開発である。平成28年度は、以下の2つの課題に注力して研究を行った。 課題1:「ピリジン類のオルト位C―H結合アミノアルキル化反応の不斉反応への展開」 課題2:「ピコリン類に結合したメチル基のC―H結合活性化によるアルケニル化反応の開発」 課題1では、反応条件の最適化を行い、配位子のスクリーニングにおいてN,N’-bis(2,6-diisopropylphenyl)ethane-1,2-diamido配位子と希土類金属の組み合わせが最も高い活性を示すことを見出した。また、イオン半径の異なる種々の希土類金属錯体のスクリーニングを行ったところ、イットリウムト錯体を用いた場合、最も高い活性を示すことを見出した。今後、これらの知見を基に、1,2-diamidoethane骨格を有する種々の不斉配位子を合成し、不斉アミノアルキル化反応への展開を行う。 課題2では、本触媒反応の反応メカニズムを明らかにするため、触媒前駆体であるエンジアミド配位子を有するイットリウムアルキル錯体に対して1当量のα-ピコリンを反応させることで、本反応における中間体を単離し、NMRなどの分光学測定により、その構造を明らかにした。また、反応条件の最適化として、反応温度、基質の当量および添加剤の検討を行った。今後、得られた中間体を用いて、さらなる当量反応を行うことで本触媒反応の素反応を追跡する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を達成するにあたり、高活性な触媒の探索、および反応条件の最適化は重要な課題である。 課題1の「ピリジン類のオルト位C―H結合アミノアルキル化反応の不斉反応への展開」を達成するにあたり、まず、本触媒反応に高い活性を示す触媒系を見出した。本反応において、N,N’-bis(2,6-diisopropylphenyl)ethane-1,2-diamido配位子とイットリウムを組み合わせることで、本触媒反応に高い活性を示す触媒となることを見出しており、今後の不斉反応への展開を行うにあたり重要な知見を得た。 課題2の「ピコリン類に結合したメチル基のC―H結合活性化によるアルケニル化反応の開発」では、その反応メカニズムを明らかにするため、触媒前駆体であるエンジアミド配位子を有するイットリウムアルキル錯体と1当量の基質を反応させることで、本反応における中間体を単離し、NMRなどの分光学測定により、その構造を明らかにした。 これらの知見は、前周期遷移金属錯体を用いた、C-H結合活性化反応のさらなる発展に関する重要な知見であり、今後の触媒反応開発を大いに促進するものであるため、研究は順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本年度の成果を基に、以下の二つの課題に取り組む計画である 課題1として設定した「ピリジン類のオルト位C―H結合アミノアルキル化反応の不斉反応への展開」では、二座ジアミド配位子を有するイットリウム錯体、および反応中間体の単離を基に反応メカニズムの解明を行う。このとき、速度論解析に基づいた熱力学パラメーターの算出のみならず、重水素化実験による速度論的同位体効果(KIE)の測定を行い、律速段階についての知見を得る計画である。さらに、不斉二座ジアミド配位子を有する希土類金属錯体の合成を行い、不斉アミノアルキル化反応へと展開する。上記の反応は既に初期検討が完了しており今後、反応条件の最適化を行うことで、より高い触媒活性およびエナンチオ選択性を示す触媒の開発を行う計画である。 課題2として設定した「ピコリン類に結合したメチル基のC―H結合活性化によるアルケニル化反応の開発」では、本反応の共生成物であり、触媒活性を低下させる原因であると考えられる1級アミンの除去方法の検討を行う計画である。また、今年度、単離した反応中間体を用いてさらなる当量反応を検討することで、本触媒反応の素反応を1段階ずつ決定していくことで、本触媒反応の反応メカニズムの解明を行う計画である。
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