研究実績の概要 |
本研究の目的は、炭素-水素結合を直接官能基化する「炭素水素結合活性化反応」について後周期遷移金属錯体とは異なる反応性を示す、前周期遷移金属錯体によるσ結合メタセシス反応を活かした新規触媒反応の開発である。平成29年度は「ピリジン類のオルト位C-H結合アミノアルキル化反応の不斉反応への展開」について集中的に取り組み、不斉アミノアルキル化反応の達成、反応中間体の単離、および反応メカニズムの解明を行った。平成28年度に反応条件の最適化を行っており、1,2―diamidoethane骨格を有する配位子に支持された希土類金属錯体が高い活性を示したことから、類似の構造を有する種々の不斉配位子のスクリーニングを行うことで、N,N‘―dimesityl-1,2-diphenylethane-1,2-diamido配位子が最も高い不斉収率を与えることを明らかにした。また、最適配位子を用いて、再度希土類金属のスクリーニングを行ったところ、イオン半径の小さいルテチウムを用いた際に、不斉収率が向上することが分かった。続いて、反応機構の解明を行うため、ピリジン誘導体のC-H結合活性化後にイミンが挿入することで生成する錯体を単離し、種々のNMR測定および単結晶X線構造解析によってその構造を決定した。さらに、単離した触媒前駆体を用いて速度論解析を行うことで本反応の反応速度は、触媒濃度の1次、ピリジン誘導体の濃度の2次、イミン濃度の0次に比例することを明らかにした。
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