アルツハイマー病の脳内病理進展過程における病的タウ蛋白の神経細胞間伝播機構の詳細を明らかにするとともに、その過程を遅延/促進する修飾因子の同定と(これには糖尿病病態による影響の解析も含まれる)、抗体療法による治療的介入のための基盤的検討を行うのが本研究の目的である。この目的を達成するため、以下の【研究計画1~4】を立案した。【計画1】まず病的タウ蛋白の神経細胞間伝播を高感度かつハイ・スループットに評価するためのin vitro培養系の構築・改良を行う。同様にADモデルマウスを用いたin vivoでの評価系の確立を進める。【計画2】計画1で構築したin vitro評価系を用いて、Aβ蛋白投与、糖尿病病態(高グルコースや高インスリン状態)、タウ抗体投与等の培養条件下で神経細胞間のタウ伝播がどのように修飾されるかを評価する。【計画3】計画2で得られた知見を、動物モデルで評価する。【計画4】これらの実験と並行し、病的伝播タウ蛋白のヒトAD脳脊髄液(CSF)中での動態を解析し、病態バイオマーカーとしての妥当性を検討する。 平成28年度には、【計画1】におけるタウ伝播のin vitroスクリーニング系の改良を進めた。現在もより適切な条件を決定するための実験を重ねているが、当初の測定系よりも感度が上昇してきている。また、【計画4】を遂行するに当たって、ヒトアルツハイマー病患者および対象群からの脳脊髄液検体の回収を積極的に進めた。30例近い症例からのサンプルを集めることができ、次年度の解析に向けて大きな前進となった。次年度はこれらの成果を基にして、【計画2】【計画3】【計画4】の研究をそれぞれ進めて行く予定である。(平成29年度は同様の研究課題で若手研究(A)に採用されたため、若手研究(A)の研究計画として実行していく予定である。)
|